UK9報道部

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中国戸籍制度の闇。差別される出稼ぎ者の子供たち

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先日、PISAという国際学力テストの結果が発表になり、中国が1位となったという記事をお仕事で書かせていただきました。その際使った資料に、以前のテストでは、migrants' children「移民の子供たち」がテストに参加させてもらえなかったというふうに書いてありました。「はて?移民の子供ってどういうこと?」と思い調べたところ、地方から仕事を求めてやってきた労働者の子供たちを指していることが分かりました。

興味を持ち調べてみたところ、こんな記事がありました。

www.scmp.com

2018年の記事で古いですが、2016年に仕事を求めて別の省に移った中国人は7700万人もいたとか。子供だけで見ると、2012年には推定2000万人の6歳から14歳が、故郷を離れていたそうです。転勤とかじゃなくて、出稼ぎのための家族の移動が主なようです。

 

中国の戸籍制度は1950年代に作られ、農村戸籍都市戸籍に分かれており、そこに教育を含めた行政サービスが紐づけられています。だから、北京に住んでいても出身地の地元の学校しか行けないシステムだったんですね。2000年代初期には北京の出稼ぎ者の子供の半分以上が無認可の出稼ぎ者用の学校に通っていたとか。学校に行っていない子供も多かったようです。

 

中国政府も問題の広がりに気づき、2006年には出稼ぎ者の子供も義務教育が受けられるようになりました。2008年には公立学校なら無料で行けるようになったんです。しかし、Global Education Monitoring Reportという報告書が、出稼ぎ者の子供たちには根強い差別があると指摘していました。

 

北京や上海の場合は公立校でも、入学しにくいように出稼ぎ者の子供には複数の証明書の提出を義務付けたり、テストを受けさせたりすることもあるようです。出稼ぎ者の子供が増えると学校の評判が落ちるからで、レベルの低いクラスに入れたり、職業訓練校に追いやったりということもあるようです。

 

教師たちの間にも出稼ぎ者の子供への偏見があり、地元の子供をひいきし、出稼ぎ者の子供を無視するという状況も把握されていました。その理由の一つは、出稼ぎ者の子供は上海などの都市の高校に行くことが以前できなかったため、受験をしない子供には教えても無駄という考えがあったことがあるようです。過去の厳しい政策が緩和されても、学校側や教師が教育の障害となってしまっているんですね。

 

別記事でも中国の戸籍制度は「アパルトヘイト」ばりと批判されています。

thediplomat.com

都市の戸籍は、海外大卒、職業的に成功している証拠、大金があれば手に入れることができるそうです。特別な人たちですよね。それができない人は一定の条件下「居住者カード」のようなものを手に入れることができ、彼らの子供たちは1年生から9年生の間は公立学校に通えるそうです。ところが、戸籍が都市にないため、高校からは公立に通えない。私立は学費が高く競争率も高いため、家族は早めに教育プランを立てなければならないそうです。「居住者カード」も手に入れられない人は、家族も呼び寄せられないとのことですが。

 

記事は、そもそも出稼ぎ者の労働力のおかげで大都市は成長できたのに、都市戸籍の人々は彼らを嫌い、差別していると述べています。また政府に対しても、共産主義の「同志」であるはずの同じ中国人の間に都市と農村で差別ができ、階級化されているのはどうなんだと。そもそも中国共産党に力を与えたのは、都市の住人ではなく、農民だったはず。なのに、党は農民を田舎に閉じ込めようとし、それがだめだとなると都市における彼らの権利を奪うと述べ、なんとも皮肉な事態だとしています。

 

中国は、かなりの格差社会になってるんでしょうか?

これも調べてみたので、後日書きたいと思います。