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明らかに密。米食肉工場でコロナのクラスター大発生

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Free-PhotosによるPixabayからの画像

日本のコロナの感染も、かなり収まってきたようです。検査の数が少ないなどいろいろ批判はありますが、5月9日時点の国内新規感染者は81名、死者601人ですので、とりあえずはほっと一息といった感じでしょうか。

 

さて、海を越えたアメリカでは、すでに死者数は7万8000人を超えました。ニューヨークなどは峠を越えたようですが、他の州では感染が拡大中です。ロックダウンを早々に緩和させている州もあって心配ですが、各地で共通のクラスターが発見されています。

www.wired.com

それは食肉工場。この記事によれば、最近全米の牛、豚、鶏肉の加工工場で新型コロナの集団感染が起きているそうです。すでに十数か所の工場が操業停止になっており、4月27日時点で19州で5000人近くの従業員が検査で陽性と判定されたそうです。

 

実はアメリカだけではなく、カナダ、スペイン、アイルランド、ブラジル、オーストラリアでも食肉工場の大クラスターが発見されており、世界的現象とのこと。原因特定は難しいのですが、いくつかの手がかりが出てきています。

 

その一つが工場の環境です。1000人もの労働者が8時間のシフトで隣り合って働くのに加え、1、2秒の間に目の前を通過する肉の塊を次々と処理するという過酷な作業で、呼吸は激しくなりマスクをしっかりと適切な位置につけておくのも難しいそうです。他者との距離を取るため、米疾病予防管理センター(CDC)は製造ラインの速度を下げてより少ない人員で作業すること、また1度に施設に入る労働者の数を制限できるようシフトをずらすことなどを工場側に要請しているそうです。

 

工場側ではCDCの要請のほかにマスクの着用、検温、清掃スタッフの増員などの予防措置をしているということですが、すべての感染者が発熱するわけでもなく、PCR検査も毎日できるほどの能力もありません。ある豚肉加工工場で検査を行った際には、370人以上の陽性が見つかったのですが、その全員が無症状だったということで、完全な対策は困難なようです。

 

もう一つ注目されるのは、工場の温度と換気です。食肉工場では、別の病原菌などによる肉の汚染を防ぐため、低温に保たれており、これが新型ウイルスが空気中で長らく生き延びるのに貢献していると見られています。また、強力な換気のため、工場内の空気の移動スピードが速くなり、これがウイルスを含んだ飛沫を素早くかつ遠くに運んでいるのではという見方もあります。

 

さらに、工場外での従業員の置かれた環境にも原因があるとされています。食肉加工の仕事は重労働で低賃金なため、違法労働者や最近来たばかりの移民などが多く従事しているとされ、彼らの多くが大人数で狭いスペースに暮らしており、家での感染の可能性が指摘されています。また、通勤も会社が用意するバスなどを利用しており、同じメンバーが長時間バスの中にいることで、感染が広がっているとも考えられています。

 

そのような労働者が感染すれば、検査や受診の機会も少ないため、症状がひどくなるまでウイルスを意図せずまき散らしてしまうことになります。また違法労働の場合、多くが携帯電話を持っていない、もしくは番号を他に教えることを嫌がるため、接触者追跡も困難ということです。こういった理由で、食肉加工工場の労働者がとりわけ感染しやすくなっています。

 

アメリカでは相次ぐ工場内でのクラスター発生で、食肉の流通が滞り価格高騰なども起きているようです。畜産は二酸化炭素の排出量が多く、温暖化を助長するなどともいわれてきましたが、産業化された畜産のシステムとそこで働く人々の脆弱性が、コロナにより改めて明らかになったと記事は述べています。

 

日本もアメリカからの肉類の輸入は多いので、今後心配ですね。今は和牛が余ってるなどと言っていますが、コロナが長引けば肉の供給だけでなく、他の食品にも徐々に影響が出て来るかもしれません。