UK9報道部

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中国の援助にタリバン期待!でも中国は意外と冷めているかも…

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ErikaWittliebによるPixabayからの画像

前回の記事、結構読んでいただけたようです。コタツ記事ライターとしては大変うれしく思います。 なので本日続き。

今日は東京大学の鈴木一人先生のツイートからネタ拝借。

 

アメリカが去ったあと、中国がタリバンへの影響力を強めるという見方が多いのですが、タリバンのほうも歓迎のようです。

www.reuters.com

タリバンの広報担当者の話なんですが、平和と和解を促進することにおける建設的役割だけでなく、国の再建への貢献も中国には期待してるそう。中国の王毅外相は穏健なイスラム主義政策をタリバン側に求めたということですが、どうなんでしょう?当面中国はアフガニスタンにとっては重要なプレーヤーとなることは間違いないようです。

 

しかし、中国の中にはとっても冷静な意見があるようです。

m.aisixiang.com

なんと、コタツライターは中国語にも堪能だった!わけないでしょ(笑)。以前シンガポールに住んでいたので中国語が聞こえてくると音はわかりますが、意味はさっぱり。現地の友達の名前さえ10年以上発音間違って呼んでましたし…。ましてや文章などレストランのメニューぐらいでも半分以上分かんないですっ。

 

実は翻訳ソフトDeepLを使うと、かなり素晴らしい日本語になるのでした。これまでの使用経験から大幅に間違っていないと思いますので、訳して読んでみました。著者は梅新育(メイ・シンユ)さんという経済学者で、中国商務部の国際貿易専門家だそうです。その概要が以下です。分かりにくいところは勝手にこうであろうと思って書いてるのでご承知ください。

 

中国は米軍の敗北という喜びに浸ってはならず、アフガニスタンが平和に発展し、無限のビジネスチャンスがある国だと思ってはいけない。目を覚ましてアフガニスタンの歴史を学ぶ必要がある。

 

アフガニスタンというのは、社会的結束力が弱く、国家より部族や宗教のアイデンティティが重んじられ、さらに宗教より宗派のアイデンティティが強い国だ。よってアフガニスタンの歴史は、裏切り、陰謀、宮廷クーデター、内戦、人気政治家の反乱に対する脆弱性といった分かりやすいものだった。なので、タリバンがしばらく政権を維持したとしても、これまでに奪った戦利品を使い果たしてしまえば経済的圧力をうけることになり、それは遠いことではない。

 

過去2世紀のアフガニスタンの混乱は、戦争と略奪という伝統的な「捕食国家」システムがすでに廃れてしまっているのに、現代社会に対応できる持続可能な経済・産業基盤を構築できなかったことが原因だ。

 

よって政権交代アフガニスタンの慢性的な食糧問題を悪化させる。アフガニスタンでは食糧生産量は1978年をピークに減少。2001年に米軍がタリバン政権を倒してからは環境改善と国際援助で食糧生産は大きく回復したが、人口も増加したため一人当たりの食糧生産量は結局減少している。

 

需要と供給のギャップは、この20年間国際援助で埋められ、それは欧米からが主だった。しかし政権交代で、援助は削減、停止されており、欧米とインドからの援助は当面再開されない可能性が高い。新政権は食糧問題でかつてないほどのプレッシャーさらされている。

 

アフガニスタンの非農業分野の開発環境も厳しい。過去20年間は建設業が最大の成長分野だったが、建設需要のほとんどは国際援助の投入によるもので、政権交代後はこれらの産業のほとんどが停止する。一部で期待されている鉱物資源にしても、大規模開発には治安と秩序の維持が10年は必要だ。さらに山間部や高地での開発にはインフラ整備が必要で輸送コストも法外だ。よって過度の期待は禁物である。鉱物資源が豊富だと言われていても、アフガニスタンの経済・社会全体を困難から引き上げるのに十分とは言えないだろう。

 

さらに国際関係が鉱物資源開発の大きな障害になっている。過去にソ連の援助でガス田を稼働させたが、1970年後半からの戦争で天然ガスの生産は急減。そのうえパイプラインはタリバンとの関係の良くない中央アジア諸国につながっている。インドやパキスタンに輸出を転じても、生産量が不十分で、新たなパイプラインへの投資をカバーできるほどの販売収入は見込めない。

 

アフガニスタンは「文明の十字路」にあり、一帯一路構想に重要だという主張も密室での空想だ。アフガニスタンは15世紀以降、国際貿易システムの中で完全に疎外されており、これが社会の孤立化、退化、部族化を加速させた原因だ。輸送システムの現代的発展で、アフガニスタンが国際貿易システムから疎外されている傾向はむしろ悪化しており、一帯一路にはあまり重要とは言えない。

 

中国は2001年からアフガニスタンに多くの援助を行ってきたが、政権交代後はプロジェクトのかなりの部分が失敗する可能性があり、育成した技術者や専門家も海外逃亡すると思われる。

 

以上のことから、中国はアフガニスタンの内政に干渉すべきではなく、国民の選択を尊重するべきだ。ポスト米国時代の経済・貿易については冷静かつ客観的に判断する必要があり盲目的に反故にしてはならない。短期的には、支払いと安全が保証されているという条件で、生活必需品をアフガン市場に積極的かつ安定的に供給することはできるが、大型投資は減速すべきだ。

 

ということです。近隣国だけによく研究してたんですね。欧米メディアは中国がどしどしアフガニスタンにやってくるかのような見方をしているところもありますが、商務部の一人の専門家の意見とは言え、やはり中国はしたたか。「帝国の墓場」と言われたアフガニスタンで、ホイホイとアメリカの代わりを引き受けるようなことにはならないようです。