UK9報道部

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シュクメルリからチキンキエフまで。ソ連は食の宝石箱だった?

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Pete LinforthによるPixabayからの画像

松屋のシュクメルリがしばらく話題でしたよね。ジョージアのお料理です。

私は吉野家はあるけど松屋(家から5分で行けるけど)に行ったことがない人なので、家でシュクメルリレシピを見て作ってみました。ガーリックの効いたクリームシチューという感じでした(合ってる?)もちろんおいしかったですよ。今やシチューの素みたいなシュクメルリの素まで発売されてますので、コース的にはカレーのポジションを目指すんでしょうかね。

 

で、最近第二弾でしょうか、松屋フーズより「チキンキエフ」が登場しております。

これね。

https://www.matsuyafoods.co.jp/matsunoya/whatsnew/images/211020_kiev_md.png

キエフとは、バターを鶏肉で巻いた伝統的なウクライナのかつ料理です」と説明されておりますが、めちゃくちゃおいしそうではありませんか!で、ウィキペディアで調べたところ、「伝統的なチキンキエフには手羽元の骨をつけたままにした胸肉を使う」とありました。手羽元からの胸肉って…ちょっとどうつながってるのかわかんないですね(笑)。日本では手に入れにくいのではと予想。

 

しかし「胸肉の代わりに鶏の挽肉を使うこともある」と書かれておりました。で、調べてみたところレシピが出てきましたね。

www.rbth.com

こちらの記事によりますと、チキンキエフの作者はフランスのシェフ、アメリカに移住したロシア人、ソ連のレストランなどいろいろあるものの、起源は謎だそうです。ロシアの文献に初めてチキンキエフが登場したのは1913年から1914年。「ハウスキーピング・ジャーナル」というのに挽肉の中にバターを入れ、卵とパン粉でコーティングしたものだと書かれていたそうです。このレシピは戦間期に忘れられ、第二次世界大戦後に鶏のフィレ肉(つまり胸肉か)を使って復活したのだそう。今ではロシアでも世界でもこの胸肉レシピが一般的な調理法だということです。なんと、鶏ひき肉が正統派だったんですね(松のやさん、聞いてる?)。

 

しかしミンチ肉レシピのほうも人気があり、こちらのほうが肉を薄くたたく必要がなく、やわらかいとのこと。また、パン粉には甘いブリオッシュを使うと絶妙なお味になるのだそうです。そしていただく際には、トーストした薄切りのパンの上に載せると、お肉の中のソースが切った際にしみこんでおいしいということでした。なんか、食べてみたいですよね。ただレシピを見ると、ヘルシーとされるチキン料理の割には、クリームやバターがたっぷり使われていて、しかも揚げ物なのでカロリーはかなりのものと思われます(汗)。

 

シュクメルリにしても、チキンキエフにしても、旧ソ連に属していた国の料理です。旧ソの料理ってどんなのかと思ったら、こういう記事もありましたよ。

www.saveur.com

バルト海から中央アジアまで、旧ソ連の料理を紹介する本「Please to the Table」を、アメリカに渡った移民の女性が書いていたそうです。1990年ごろ、ちょうどソ連が崩壊に向かってるころですね。

 

彼女は家族とともにアメリカに移民したんですが、その後も強くロシア文化につながっていたかったようです。モスクワに住んでいた子供時代には、海外旅行は無理なので、黒海沿岸のオデッサウズベキスタンジョージア(当時グルジア)に行ってみたいと思っていたそう。自分にとってのエキゾチックがそういった場所で、今思えばプロパガンダ信者だったそうですが、ソ連の多様性に魅了されていたそうです。

 

アメリカではピアニストを目指して学んだものの、手を痛めたため断念。イタリアに住んでいたこともあり、しばらくイタリア語の料理本を英訳していたそうなのですが、それなら自分で料理本を書いたほうがよいと思い、彼氏とともにソビエト料理の企画書を書いたところ、本となって賞を取り、Amazonの人気本にもなってしまったんだそうです。

 

彼女によれば、ソ連と言えば、パンを買うのに行列、魚はニシンで人々は飢えているというイメージがアメリカにはあったのだそう(私もそうでした)。実際には、各地で多様な料理があり、例えばアゼルバイジャンでは栗やカボチャを具材に使ったピラフがあり、ウズベキスタンコリアンダー饅頭はほとんど中華料理と同じだったと話しています。モスクワのロシア料理のイメージとは全く違うと。

 

ソ連が崩壊した後、食に関しては新しい国民意識が生まれているんだそうです。食べ物はより独自なものになり、旧ソ連の国々ではどこの国のピラフがおいしいかとか、どこの国が自分たちの料理を盗用したとかで盛り上がっているようですが、結局料理は同じであり続けることはないというのが彼女の意見です。また、ロシアとウクライナの間でボルシチの起源を巡っての国粋主義的争いがあると言いますが、料理は国境が出来る前から存在していたのであり、食における文化の盗用と言えるのだろうかと。争いは地政学的状況をよく表しており、誰が作ったというのは本当は別問題だと述べています。

 

まあ、そうですね。島国日本だって、じゃあラーメン、餃子、カレーとかいったい何料理なんだと言われると、ハイブリッド料理なのかもしれません。この本はレシピ以外にも旧ソの面白い食文化の情報もいっぱい入っているようで、読んでみたいですね。Amazonでみたら5000円以上の高い本だったので今は断念ですが、挽肉のチキンキエフは作ってみたいと思います。

 

ちなみにこの本の副題は、The Russian Cookbook(ロシアの料理本)でして、出版当時はソビエト料理本と呼ばないほうがいいと思ったため、代わりにロシアとしたのだそうです。その後ウクライナ人やアルメニア人から怒涛のご批判が来たとのこと(ありそう、笑)。今ならUSSRソ連の英語略称)と副題に入れてもレトロでクールと思われるのではないかということです。