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中国政府は容認?北京五輪中国代表アイリーン・グーに二重国籍疑惑

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北京の冬季五輪ももうすぐ終わりますね。

個人的には平野歩夢選手の金メダルが最高だったかな。

2回目のパフォーマンスで2位にされて、うそでしょっと思ったんですが、3回目お見事でした。あれが金じゃなかったら何が?って感じでしたね。

 

さて、最近フィギュア、スノーボードなんかを見ていても、アメリカでは冬季スポーツはアジア系の活躍が目立つんですが、そのなかでも女子フリースタイルスキーのアイリーン・グーが金2つ、銀1つのメダル大量生産で強さを見せました。彼女、実は北京五輪ではアメリカ代表ではなく中国代表です。

 

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www.economist.com

www.theguardian.com

私、あんまり知らなかったんですが、モデルもやっているかなり有名な選手みたいです。綺麗ですもんね。18歳で米サンフランシスコ出身。中国人の母親とアメリカ人の父親の間に生まれ、餃子大好き中国語ペラペラとのこと。なんで餃子?餃子って西洋では中国人の典型的好物と認識されてるのかな(笑)。

 

2019年に中国籍を取得して中国代表として五輪に出ていますが、彼女がアメリカ国籍を捨てたかは分からないそうです。アメリカは二重国籍を認めていますが、中国は認めていませんので、ルールに則れば、彼女は米国籍から離脱しているはずです。

 

彼女のようなケースは中国でも結構問題になっているそう。過去に何百万人もの中国人が海外に渡る、または投資をして外国の国籍を得ています。法律では、その結果自動的に中国の市民権ははく奪されるはずです。ところが多くの人が外国籍を得たことを秘密にしており、中国籍を失うことを避けています。中国国民のみに交付される身分証明書をもっていれば、中国に住んで働くのがかなり容易になるとエコノミスト誌は説明しています。

 

かつては中国は海外に住む華僑を自国民とみなしていました。しかし、彼らの忠誠心が疑われるようになり、1950年代に政策変更。1980年には二重国籍禁止となりました。中国国内でも二重国籍禁止は人材の流出を促しているという批判が出て、外国籍=非愛国者というのはいかがなものかという意見があったそうです。これは日本でも言えますね。外国籍の日本人研究者のノーベル賞受賞の時いつも話題になります。

 

一方で、2009年には愛国映画に出演してた俳優の数人が、外国籍をもっていたことがわかり、怒りの声が上がるという事件もありました。ポップスターなども同様に厳しく糾弾されており、多くの国民は現行法を支持しているそうです。二重国籍が認められれば国内で不正に金を稼いで海外に逃げることが容易になるという主張もあるそうです。うは、いまや中国の方がどこよりも稼げるということでしょうか。

 

中国は2017年に外国パスポート保持者入国の際、指紋採取を開始しました。指紋は中国の身分証明書との照合ができるため、取り締まりが容易になるということで、二重国籍者は震えあがったらしいです。エコノミスト誌は、「五輪で金メダルが狙える人には柔軟に適用できるようです」と皮肉っぽく書いています。

 

グー選手は、自分の国籍の話では常にお茶を濁しています。まだアメリカ国籍なんでしょうかという質問に、「私はアメリカにいるときはアメリカ人、中国にいるときは中国人(エコノミスト誌)」と回答。まあ、子供のころから毎年中国に滞在しているということなので、その気持ちは分かりますが、答えになってないですね(汗)。

 

ガーディアン紙から、国籍のことで批判が出てますけど、という質問をされたときも「私は18歳で最高の人生を生きている」「私はいい人で、自分が下す決断の理由も分かっている。より多くの人々の利益になると思うからそうしている」と答えています。また、「無学で感謝や愛の経験のない人をなだめるために、時間を浪費する必要はない」「私を信じない、私が嫌いというのは損失だ。そう思う人が五輪で勝つことは絶対ないから」とかなり強気です。

 

ウイグル族の問題など、様々な人権侵害を行っている中国を代表するのは不謹慎という意見がアメリカではたくさん出ているそうです。以下は保守系メディアの意見。

www.nationalreview.com

グー選手は、フリースキーで好きなところは、どの国のために滑っているかではなく、仲間と共有する情熱であり、人々を団結させるこのスポーツの力だとしています。競技は国籍の問題ではなく、人と人をつなぐ、文化を共有する、互いに学び友情を育むと発言しています。

 

グー選手の国籍は関係ないという主張にニッキー・ヘイリー前国連大使は、「人権侵害」に加担していると批判。「市民権」という点ではどちらかを選ばなければならないと断言し、アメリカと中国は2つの全く異なる国だと述べました。「すべてのアスリートは国旗を背負うとき、自由を支持するのか、人権侵害を支持するのかを知っておかねばならない。その中間はない」としています。まあ、アメリカ人なら気持ちのよいお話ではないでしょうね。

 

私はグー選手がモデルという点も注目してしまいます。実は、彼女、五輪前から多文化アイデンティティを売りにモデルとして大成功しています。

www.lifestyleasia.com

 

この記事によれば、彼女は中国で人気急上昇。微博アカウントには約500万人のフォロワーがおり、中国の若者にとっては強力なインスピレーションになっているそう。アメリカと中国という2つのルーツを持つ彼女は、世界最大の2つの市場において、ブランドを代表するにはパーフェクトということです。

 

2021年にはグー選手は16のブランドとスポンサー契約を締結。今年は米中合わせて7つのブランドを追加。エスティ―ローダー、ルイ・ヴィトン、ヴィクトリアズ・シークレット、ティファニーなど有名ブランドのモデルとして活躍中です。中国ではチャイナモバイル、スポーツメーカーのANTA、中国銀行、JD.comなど主要企業の顔となっています。

 

市場調査会社の調べでは2021年に推定3140万ドル(約36億円)を稼いでいますが、なぜかフォーブスの番付対象には入ってなかったそう。もし入っていれば、大坂なおみセリーナ・ウィリアムズに続く3位だったということです。

 

二重国籍疑惑はぬぐえませんが、中国代表で五輪に出たことでさらに中国の仕事は増えるでしょう。もしかしてここが狙いだったのかも。西洋と東洋の魅力を兼ね備えるアジア系アメリカ人(今はアメリカ系アジア人か?)ということで、欧米でもアジアでも注目度は上がると思います。五輪はまさにプロモーションにとっては格好の場だったことは確かですね。プレゼン力高し。お見事です。