UK9報道部

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中国、そして台湾も加入申請。アメリカはどうする?TPPが面白くなって参りました!

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Michael GaidaによるPixabayからの画像

環太平洋連携協定(TPP)が大変なことになってきました。TPPは、そもそもニュージーランドシンガポールなどが大所帯の世界貿易機関WTO)で決められない貿易ルールを新たな枠組みで決めましょうと集まったのが始まり。そこに2008年から日本やアメリカなどが加わって、12か国でやろうということになりました。中国が台頭するなか、オバマ元大統領が中国のやり方に振り回されず、高度に自由化された貿易圏を作ろうということでアメリカが中心となって進んでいたわけです。経済だけでなく安全保障面にも影響するもので、メディアや識者からは対中包囲網と捉えられることも多かったと思います。

 

交渉を重ね、各国が譲歩し、2015年にまとまったのですが、雇用を奪うなどと国内から支持を得られず→米議会で批准されず→オバマ嫌いのトランプ大統領保護主義が盛り上がる中で脱退を2017年に表明。「アメリカ抜きじゃお流れ」的ムードとなりましたが、当時の安倍首相が崩壊を食い止め(ファインプレー!)、米抜きのTPP11で再出発。無事2018年に発効の運びとなりました。ただ、アメリカ抜きなので規模はぐっと小さくなっています。それでもNHKによりますと、2018年時点で世界のGDPの13%、貿易額の15%、人口5億人がカバーされているとのことです。

 

で、11か国以外に新たに飛び込んできたのがEUを抜けたイギリスです。加入申請をし交渉開始と報じられ、なんとなく日本のなかでも「環太平洋じゃないけどまあいっかな。新メンバ-増えるのよいことよね」っていう受け止めが多かったと思いますね。ここまでは平和だった、はい。

 

ところが、9月16日に中国が申請を正式に発表。対中カウンターバランスを目的に作られた関税同盟に、親分アメリカが離脱の後に中国が入るのかと、大きな驚きとして報じられました。そして続いて22日にはなんと台湾が加入申請すると表明。表向き一つの中国から二つの中国が手を挙げたわけで、なんとも困った感じになっているのが今です。

 

もともと両国ともTPP加入は検討していたんですが、気になるのが「なぜ今?」というそれぞれの意図です。中国の場合は豪潜水艦事件からの米英豪の新同盟の直後に加入申請を発表していることから、それに対する返答という見方もあるようです。台湾の場合は読売新聞によれば、中国の正式申請を受けて急いだということです。

 

中国のほうですが、面白いと思った識者の意見をご紹介します。

国際政策シンクタンクPerth USAsia Cetreのジェフリー・ウィルソンさんというリサーチディレクターの方です。いつものようにざっくり訳していきます。

 

かつてアメリカが米の地域的利益を促進するための「空母戦闘群」に当たるとまで言ったTPPに中国が参加しようとすることはどんな意味があるのだろう。

 

まず現実的に、中国の参加には国家資本主義モデルの構造改革が必要になり、これは政治体制的に絶対にできない。例えば加盟により中国の産業生態系の根本的な改革となる国有企業についてのコミットメントが必要になる。環境、労働、サービス、透明性といった必要条件は言う間でもなく、実現はしないだろう。

 

だから加入が目的でないのなら、2つの異なる動機が考えられる。一つは、台湾の加盟阻止だ。台湾より先に申請すれば、台湾の加入はほぼ不可能だ。既存のメンバーは二つの中国のどちらを選ぶか迫られる。日豪は勇気をもって対応するかもしれないが、他のメンバーは違う。

 

二つ目は、いつもながらの嫌がらせだ。中国は経済協力に熱心とアピールすることでアメリカに代わるパートナーとして外交的に売り込むことができる。また国内を分裂させるという側面もある。日豪などには対中政策の軟化を求めるグループがあり、彼らは加盟すれば中国も外国政策を弱めてくるなどのメリットがあると主張してくるだろう。

 

もちろん現メンバーが罠にかかる可能性はゼロとは言えないが、中国は豪と貿易戦争中、カナダには人質外交を展開(ちなみにこちらはファーウェイ副会長が司法取引で起訴猶予となり、その人質だったカナダ人2人が解放され今月25日に解決した模様です)、日本には尖閣問題があり、今のところ申請を容認することはないだろう。

 

中国との交渉開始には、メンバーのコンセンサスが必要なので、完全に拒否されるかもしれないが、まずはイギリスの申請からという言い訳で問題は先送りされるだろう。損失を被るのは加入申請間近だった台湾ではないか。

 

中国の今回の動きは、短期的には台湾加入を阻止し、反米メッセージを強化するという実質的にコストのかからないパワームーブ(他がやらないことをやって自分を優位な立場におくこと)に見える。いずれ周囲の批判や反対を受け入れないため真実が見えなくなった「裸の王様」であることが分かるので、長期的には中国のダメージになる可能性もあるだろう。

 

オーストラリアの方のようですので、かなり辛辣ですね。この時点では台湾がすぐ申請するとは思っていなかったようですが、その後のツイートでは、メンバー各国が一方に肩入れと取られては困ってしまうので、両方加入か両方却下の2択になるのではとしています。TPPメンバーシップが、インド太平洋地域を形成するより広範な戦略的競争の代理戦場になりそうだということです。

 

アメリカからの辛辣な意見も出ています。

www.nytimes.com

こちらはNYTのコラムニストでピュリッツァー賞複数回受賞の著名なジャーナリスト、トーマス・フリードマンのものです。とっても長いので短く訳します。

 

もともと中国にとってTPPはまさに脅威だった。中国の改革派にとっては中国を変えるかもと期待できるもので、強硬派にとってはアメリカのルールを飲まされるという潜水艦以上の恐怖だったわけだ。ところが、アメリカが抜けてしまった。その穴を中国が埋めますよ、と言って乗っ取れば、これは米英豪の潜水艦取引に対抗するのにはこの上ない一手だ。すぐに加盟はできなくても中国は一部の要求事項を満たしながらお茶を濁しつつ他の加盟国を誘惑して入り込めると見る専門家もいる。

 

TPPはアメリカではトランプだけでなく民主党の左派からも理解されず、推していたヒラリー・クリントンでさえもトランプとの選挙戦のため逃げ出してしまった。他のメンバー国は、TPPでこれまでになかった貿易上の譲歩をアメリカに与えたのに、アメリカが手を引いたことで今度は中国がアメリカの代わりとして収まろうとしている。今からでも遅くはないので、アメリカはTPPに戻るべきだ。例え中国が加盟したとしても中国だけを利することは阻止できる。何年もかけて潜水艦作りを手伝うより今TPPに入るほうがいい。なぜなら潜水艦ができたころには、CPTPPは、「Chinese People's Trans-Pacific Partnersship」に名前を変えているだろうから。

 

ただアメリカ国内は非常に保護主義に傾いていますので、事実上戻るのは難しいという意見もあります。一般のアメリカ人にはTPPの意義もわからないでしょう。著名な識者でも、TPPとRCEPを混同している人もいるぐらいです(この記事!読める方どうぞ)

 

こちらの香港紙の記事も面白いです。

www.scmp.com

政治リスクコンサルタント会社、ユーラシア・グループのアナリストによれば、中国は自国の裏庭で軍事的、外交的な対抗措置が強化されていくことを認識しており、それを相殺するのが経済パワーだと見ているそうです。アジア・太平洋地域における貿易戦略の欠如がおそらくアメリカの最大のアキレス腱だと見ており、それに対抗するのがTPPへの加盟だということです。

 

香港城市大学のジュリアン・チャイス氏も、オバマ政権でとん挫して以来、新たなアジア太平洋戦略をアメリカは打ち出していないと指摘。アイデアはいくつかあっても、安全保障、貿易、その他を含む統合的な戦略が明らかに不足しているとしています。すべてが解決するというものではありませんが、今TPPに戻るのが最善としており、このあたりはフリードマン氏と同意見のようです。

 

中国の申請が米英豪の新同盟への対抗策であり、TPP11の結束力を見ようとしているという意見もありますが、実は本気でTPPに入ろうとしているという見方も紹介されています。アジアの識者の中には、厳しいTPPのルールに合わせて国内を改革し、経済のさらなる合理化を目指しているという意見や、TPP参加で経済開放ペースが加速し中国にとってはプラスという意見もあるようです。もともと毛沢東時代から様々な領域で同時進行の発展を維持するという戦略が中国にはあり、地域、二国間、多国間のどの協定にも興味を示しているとのこと。よってTPPのような貿易協定は、中国の長年の国内目標に合致するものだということです。

 

ということで、中国の意図がホントに知りたいところですね。交渉にはかなりの時間がかかるということで、答え合わせはすぐにとはいかないようです。また今後のアメリカの出方も気になるところですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスお怒りで外交問題に発展か?豪潜水艦プロジェクト騒動を解説

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Kim HeimbuchによるPixabayからの画像

私オーストラリアって20年ぐらい前に行ってるんですが、結構のんびりしたステーキのおいしいところっていうイメージから止まっております(笑)。そもそもダウンアンダーという世界の中心から遠いところと長年見られていたわけですが、実は近年中国の台頭でインド太平洋地域の安全保障上の役割がマシマシの国になっているようです。

 

で、今回出たのが潜水艦問題。実はこたつライターの得意分野なのでありました(鼻息!)。なぜなら私は2015年ごろに豪潜水艦プロジェクトについての記事を発注されて以来、このネタで何度も書いてきたからです。軍事オタクとかでは全くなく、技術的な部分は今でも理解できないことが多いのですが、書いてるうちにプロジェクト自体の経緯&展開に詳しくなってしまいました。

 

そもそも豪潜水艦プロジェクトは、老朽化したコリンズ級という潜水艦から新しいのにしましょうというもので、2014年ぐらいから話題となり、当時の首相の安倍さんの大プッシュもあって、日本の潜水艦「そうりゅう」が受注確実とまで言われてたんですね。4兆円プロジェクトという大型案件で、日本でも期待が高まり盛り上がりました。ところがその後日仏独の受注合戦となり、なんとフランスが受注しちゃったわけです。しかし、このフランスとの合作がめちゃくちゃ問題化していたというのが現実でした。

 

以下当時書いた記事をいくつか。

newsphere.jp

2018年ごろから計画が遅れているというニュースが頻繁に出始めました。期待させられたのに受注を逃した日本の軍事ファンの間からは、「ほらね」的な感想が…。日本の買っておけばよかったという識者の意見にも「どうせ中国とオーストラリアは蜜月だから日本の潜水艦なんかやらんでもよろしい」などの冷たいコメントが出ていたのを覚えています(涙)。

newsphere.jp

で、今年になると、遅れに加えコスト増大&国内建造固執というハードルが問題になっていると報じられています。このころから契約キャンセルかといううわさも。

 

そして今週ついにフランスを切って英米協力で原子力潜水艦を建造する、という新たな計画が発表されました。

newsphere.jp

豪にとって今でも中国は輸出の面では大事なお客様なのですが、このところいろいろ対立があり、以前の蜜月はどこへやらという冷え込み方です。そこで中国の脅威を念頭に米英豪の3か国で新たな同盟を作り、英米で協力して豪に世界でも数少ない米の技術を使った原子力潜水艦を作ってあげよう!というお話に豪が飛びついたという感じになっています。フランスははしご外されて激おこ…。

 

この計画変更ですが、どういう経緯だったのかを政治誌ポリティコが説明してくれています。

www.politico.eu

どうもフランスとの契約をやめようというのは6月ぐらいから固まってきていたようです。4月にはプロジェクトの次の段階の契約締結を豪が拒否していたということ。上院委員会でも、フランスとの取引をやめた場合の選択肢を検討してきたと国防長官が述べていました。

 

オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー誌によると、7月のイギリスでのG7サミットで、バイデン、英ジョンソン、豪モリソンの三者会談が開かれていました。この時はバイデン氏がモリソン氏に一対一の対談の機会を与えず、冷遇したと解釈されていたそうです。しかし今思えば、この会談は潜水艦に関する大事なものだった可能性があるということでした。きっとそうでしょうね。

 

契約解除を望む理由としてあげられているのが、まずプロジェクトを受注した仏ナーバル・グループの前身DCNSが、ハッキングを受けて潜水艦に関する文書2万件以上が流出したという事件が露呈したことだそう。これにより、フランス企業とのプロジェクトの安全に懸念が示されました。特に野党がかみついたことが大きかったようです。

 

さらに、問題だったのはコスト増大です。豪はフランスのバラクーダ級の潜水艦なら、ディーゼルから原子力に変更ができる点で熱心だったとされていますが、費用はその後2倍に膨れ上がり、メンテナンスも入れれば予想以上の金額になることが改めて示されました。

 

また、最初の潜水艦が納入されるのは2035年以降、さらに建造自体は2050年まで続くということになり、2026年に退役が予定されていたコリンズ級に代わる潜水艦としては納期が遅すぎるという問題もありました。プロジェクト自体も遅延しており、コリンズ級を修理しながらでも、待ちきれないということだったようです。

 

ポリティコ誌は、最大の問題は、地元産業の関与をめぐる争いだったかもと述べています。そもそも、2016年の契約では、建造は国内で行われ、地元で90%製造、2800人の雇用を維持するというものでした。しかしフランス側はこの条件を改定したうえに、豪の産業自体が満足なレベルに達していないと反発していたということです。

 

豪は何年も前からプロジェクトの問題を認識していたのに、なぜ今になって契約を解除したのか?という疑問が残りますが、単に代替案を待っておりそれがやってきたからということのようです。豪にしてみれば、英米との新同盟で原潜が手に入り、しかも国内で建造できるという新たな道が開けたわけです。

 

これに対して、フランスは同盟国であるアメリカに怒り心頭。バイデン大統領のやり方は、前任のトランプ氏を彷彿させるとフランスの外相は発言しました。今日になってフランスが駐米、駐豪大使の召還を決定したというニュースも出ています。

 

フランス側は、豪の動きに対抗するとしており、すでに2019年に政府間協定に署名しているのに、どうやって契約を解除するのかと述べているそうです。2017年の豪とナーバル・グループとの契約では、豪政府と仏企業のどちらかが「当事者の契約実施能力が『例外的な出来事、状況、事柄により、根本的に影響を受ける』場合には、一方的に契約を解除できる」とされているとのこと。遅延やコスト超過、約束の不履行がこの条件に当てはまるかどうかは、裁判所の判断にゆだねられることになりそうだとポリティコ誌は述べています。

 

もし豪政府が撤退を決めた場合、契約書では「両者は継続のため共通の認識を得られるかどうか協議し、12か月以内に共通の認識が得られないなら、最初の契約終了通知の受領から24か月後に契約終了が有効になる」と規定されているとのこと。英米は18か月かけて新型原潜の技術をどのように提供するか検討するとしていますので、タイミング的にはばっちりではないかとポリティコ誌は述べています。

 

上院議員によれば、すでに20億豪ドル(1600億円)がプロジェクトに費やされたということですが、撤退費用を払っても、継続よりも撤退のほうがコストは大幅に少ないと地元メディアに述べたそうです。オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー誌は、フランスとの契約終了で納税者には4億豪ドル(320億円)の負担が発生しそうだとしています。

 

なんだかとってもお高いプロジェクトになってしまったようですが、新たな契約での原潜のほうはお値段どのぐらいになるんでしょうね。今度ばかりは、「やーめた」は国民から許されないと思います。個人的には、最初っから日本の潜水艦買ってくれてればよかったのにと思いますけどね(溜息…)。

 

訂正:G7会合は7月ではなく6月でした。ネタ元のオーストラリアン・フィナンシャル・レビューのは7月になっていましたが、そちらが間違いだったようです。

 

 

 

 

 

 

 

やがて「ただの風邪」へ。新型コロナはどう収束するのか?

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Orna WachmanによるPixabayからの画像

全国的にコロナ感染者数減ってきましたね。

ワクチン接種も進んでいます。日本政府はワクチン確保でグッドジョブ、日本の死者や感染者数は依然として他国と比べれば少ないですし、オリパラもやって国際貢献で、菅さんは言われるほど悪くなかったかなと。個人的には、顔に花がなかった&コミュ力不足が響いたんではないかと思います。次の総理は誰がなってもやはりまずはコロナ対策ですね。

 

さて、国外を見ますと、ワクチン接種をいち早く開始して普通の生活に戻れる公算だったアメリカに、デルタ株の感染拡大でまたもや大波がやってきております。ワクチンだけで解決できないことが分かった今、いったい今後どうやってパンデミックは終わりを迎えるのかという記事がでています。

 

www.theatlantic.com

私の大好きなアトランティック誌のライターEd Yongの記事です。コロナ関連でとても分かりやすく的確な情報を発信し続けており、その功績でピュリッツァー賞を取ってます。科学ジャーナリストですが、動物ものなんかも得意ですね。

 

記事では、ワクチン接種が進んだものの、デルタ株登場でワクチンだけでの問題解決は現実的ではなくなったと述べています。ブレイクスルー感染や子供の感染の増加が深刻なんですが、この次はどうなるかというのを専門家に聞いています。いつものようにざっくり訳でいきます。

 

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のアダム・クチャルスキー氏は、ワクチン接種率が上がると、感染の波は小さくなり、管理しやすくなると言います。しかし、十分な人口が免疫を持ち自動的に感染が収まる状態=集団免疫には、ワクチン接種だけでは到達しそうにないとしています。最低でも人口の90%が接種しなければ集団免疫は達成されないと見られ、現在利用できるワクチンでは数学的にそれは不可能です。

 

つまり、ゼロ・コロナは幻想であり、パンデミックの終焉は、ほとんどの人がワクチンか自然感染を通じて、免疫を持ったときとなります。そうすれば、感染の急増のサイクルは止まり、パンデミックは次第に消滅します。そして新型コロナは風邪を引き起こすコロナウイルスと同様に繰り返し起こる生活の一部ととなります。今までよりも問題にならなくなるのは、ウイルスの性質が変わったからではなく、ウイルスがもはや新型ではなくなり、人類が免疫学的に脆弱ではなくなったからということになります。

 

クチャルスキー氏は2020年3月から新型コロナはエンデミック(地域的、季節的な感染)になると述べていましたが、結果的にそうならざるを得ないとしています。以前はゼロは目指せると思っていたそうですが、デルタが状況を変えてしまったということです。

 

私の同僚、ジェームズ・ハンブリンは、ウイルスが今後も存続し続けるのであれば、ほとんどの人が生きている間に一度はどこかで遭遇することになるとしています。多くの人が懸命に感染を避けようと努力してきたので、この事実は受け入れがたいかもしれません。しかし、エモリー大学の感染症専門家ジェニー・ラヴィーン氏は、ウイルスだけでは恐ろしくないと言います。問題はウイルスと未熟な免疫システムの組み合わせであり、後者がなくなればウイルスはそれほど怖いものではないとしています。

 

ワクチンを接種することで、新型コロナウイルスとCOVID-19という病気を切り離すことができます。いずれはワクチン接種済みでも感染してしまいますが、その結果重症になるには及びません。不快な症状が出る人も回復するでしょうし、多くは感染しても気づかないままでしょう。将来的には、2年前と同じような生活が戻り、誰かに移され治るという時代が来るでしょうが、まだ我々はそこまで到達はしていないとラヴィーン氏は話しています。

 

私が話を聞いた専門家で、いつそのような状況になるのかを予測した人はいませんでした。デルタ株が夏の間にワクチン未接種者に行き渡ることで今後の感染急増はないと見る人もいますが、まだワクチン接種をしていない人が多いため、秋、冬の感染急増もあると、ジョンズ・ホプキンズ大学のケイトリン・リバーズ氏は見ています。

 

パンデミックは終わりますが、まだ世界の多くの国ではワクチン接種が進んでいないため、こういった国にとっては今年はロックダウンや壊滅的感染拡大などの厳しい年になるだろうとクチャルスキー氏は述べています。英米はエンデミックの道に向かっているものの、まだ終わりは見えておらず、今後も困難が待ち受けているとしています。

 

結局人類は新型コロナとの微妙な平和に向かうでしょう。集団感染はよりまれで小規模になるが、免疫力のない赤ちゃんが多く生まれれば発生の可能性はあるでしょう。大人の場合は免疫力が大幅に低下した時点でブースターが必要になりそうですが、少なくとも現在のデータによれば、2年は起こらないでしょう。ただ、懸念されるのは現在の免疫防御を逃れる新たな変異種の登場で、ウイルスの拡散を許せばその可能性は高まります。

 

「コロナはただの風邪」という人がいますが、そこまで行くには、ワクチンと自然感染で人間の免疫システムがコロナ慣れしないとダメということのようです。しかし、2年はブースター不要っていうのは「ん?」です。コロナがただの風邪になった未来の話なんでしょうか?今はワクチン効果は6か月と思っていたので、ちょっとその辺が謎です。1か月前の記事なので、その間に状況が変わったんでしょうかねぇ。

 

実は、「コロナは風邪になる」とドイツの疫学者、クリスティアン・ドロステン氏も言っています

 

 

ドイツ語のポッドキャストの内容を英訳された方のツイートですが、やはりワクチンでエンデミックになるとドロステン氏は言っています。そもそも集団免疫とウイルス撲滅のゼロコロナを混同する議論があるが、ゼロコロナをゴールとしたことはないと述べています。

 

ドイツでは、ワクチンで人口レベルの感染からの保護を達成した後、ウィズコロナで生きることを目指します。ウィズコロナはワクチン接種が不十分な間は危険で、まず死亡率を下げてウイルスが静かに人口のなかに広がることが必要です。普通の風邪になるかは国民次第、そしてワクチン接種率次第ということです。

 

ワクチン効果が薄れることでブースター接種という考えもありますが、ブースターを繰り返すことを目的とはしていません。エンデミックになるということは普通の風邪を目指すことですが、ブースターではなく、ウイルスとの繰り返す接触によってできる状況で、これにより集団の免疫力はより回復力を持ちます。こっちのほうがより長持ちして強い粘膜免疫を作ります。

 

私が望む免疫は、ワクチンで免疫を作り、その後1回、2回、3回と一般的な感染をすることです。そうすれば私は長期的な免疫を獲得し、新型コロナウイルスには数年に1度、他のコロナウイルス同様に遭遇するだけになります。これは健康な成人だけができることで、全員ができるわけではありません。

 

ちなみにドロステン氏は、ブースターを受けられるならぜひ受けたいということ。ただし、途上国の接種分のために今は遠慮しておくということでした。

しかし、ワクチン後に自然感染で免疫力アップというのは、ちょっと怖い気もしますね…。どうもドロステン氏は粘膜免疫は自然感染からのほうが付きやすいと考えているようです。

 

とにかく、早くコロナがただの風邪になり、みんなで会って楽しく過ごせる日が戻ってくることを願います。そのためにもまずはワクチン接種ですね。

 

 

 

 

 

 

アメリカはアフガニスタンで何を間違えたのか?9人の識者の見方

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Amber ClayによるPixabayからの画像

アフガニスタン情勢、日々ニュースが出ていますが、本日をもってアメリカは、撤収完了となりました。

 

現地に混乱を引き起こしたまま、予定通り出て行ったわけですが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙でこんな記事を見つけたので読んでみました。www.wsj.com

8月21日に更新された記事ですからそれ以前に出ていたものと思われます。複数の識者が「アフガニスタンで何がうまくいかなかったのか」について各自の意見を述べております。全員は知らないんですが、かなり有名な方々のようですね。なんと全部がっつり批判でした(涙)。長いので、DeepLさんとのコラボのザクっと訳で(そんなにずれてないと思います)それぞれご紹介します。

 

1. ダニエル・プレトカ(保守系シンクタンクアメリカン・エンターブライズ研究所シニアフェロー)

 そもそもアメリカ人は良い悪い、勝ち負けなど白黒をはっきりつけたがる。「より良い現状を維持する」というのは、我々にとって強い呼びかけではない。

 アフガニスタンではうまくいかないことがたくさんあったが、過激派に国を渡さないという取り組みにとっては致命的なものではなかった。一定の成果にも関わらず、この10年以上、アフガニスタンでの戦いが価値あるものだとし、アフガニスタンの進歩を称賛した大統領はいなかった。テロリスト復活の時代に戻るのを遅らせ、アメリカ人の安全を守るため犠牲を払ってくれているのがアフガニスタンの人々であることも誰も思い出させてくれなかった。数千人の兵力があれば我々は安全だと言い切れる指導者もいなかった。

 その代わりに、バイデン大統領は、20年たっても勝てなかったのでもうやめようといった。しかしアメリカは一度勝ったあとに負けを選んだのだ。我々は必然的に、自分たちの安全のためにまたアフガニスタンに戻ることになるだろう。

 

現状維持がなんでできなかったのか、ということでしょうか。筆者が保守系ネオコンというところは注意ですが、一理ある。撤退後、安全保障的に方針転換せざるを得なくなり、またアメリカが戻ってくるという考えのようですが、そこについての詳細は触れられてないです。

 

2. スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授)

 アメリカが失敗した大きな理由は二つある。アフガニスタンを西洋式の自由民主主義国家にするというミッションが無理だったこと。そしてアフガニスタンでの作戦を実行した側が、進捗状況と成功の見通しについて嘘をついていたことだ。

 アフガニスタンを我々のイメージで作り直すなど、愚かな行為だった。外国が押し付けた政権交代が民主主義につながることはほとんどない。特に貧しく、文字を読めない人がほとんどで、民族的に分裂し、紛争が絶えない世界ではそうだ。アメリカはほとんど理解できない国で壮大な社会実験を引き受けてしまった。一方タリバンは地域社会に溶け込み、隣国パキスタンの支援も活用。この状況下では勝利の戦略を立てるのは不可能だった。

 勝ち目のない戦争だったのに民主党共和党政策立案者や軍の幹部は国民に事実を伝えずメディアも彼らの明るい評価にほぼ意義を唱えなかった。米軍兵士とアフガニスタン人に代償を払わせたのに責任者は責任を問われていない。この20年間の悲劇が、外交政策エリートの過ちを露わにしたと言える。

 

ちょっとアフガニスタン人を見下した見方ですが、アメリカにはかなり辛辣ですね。ウォルト氏は、軍事介入主義に反対で、アメリカはオフショアバランサーとして絶対に必要なときしか干渉せず、軍事的プレゼンスは最小に維持すべきという考えの持ち主だそうです。

 

3. エリオット・A・コーエン(ジョンズ・ホプキンズ大学教授、元米国務省顧問)

 アフガン戦争の間、アメリカの指導者たちはこの国の社会や歴史のみならず、自分たちの政策の有効性についても関心を示さなかった。欧米の官僚たちはただ仕事をこなすのみで、腐敗のないアフガニスタンの治安部隊を育て、長らく維持するという最も重要なことを脇に追いやった。

  欧米諸国は、犠牲者がほとんど出ず軍隊への負担が最小限だったのに辛抱することができず失敗した。オバマ大統領が撤退の意思を示したときからアフガニスタン人はそれに気づいており、その後の大統領も同じ考えを示せばアフガニスタン人の士気が低下するのは当たり前だ。

  このような状況なのに、バイデン政権の無能な政治的軍事的計画が作り出した絶望と降伏のスパイラルは、我々が見捨てている人々への軽蔑と彼らの運命への無関心と同様に憂鬱だった。アフガニスタンでの任務は数年どころか数十年かかるものだった。運命だけでなく不注意で愚かな大失策がもたらした結果だ。

 

 オバマ時代からの撤退ありきの姿勢がアフガニスタン軍のやる気を減退させていたというのはもっともな気がします。ちなみにコーエン氏は、ネオコンに分類される人でイランとイラクとの戦争を強力に支持した一人ということ。そして反トランプの共和党支持者でもあります。

 

4. フセインハッカーニ(保守系シンクタンク、ハドソン研究所、南&中央アジア・ディレクター)

 アメリカの失敗は、任務を迅速に終わらせるための1つの計画ではなく、毎年違う年間プランを20年間続けてきたことだ。目的はアルカイダを保護するタリバンを追い出すことだったが、ブッシュ政権アルカイダが衰退すればタリバンも脅威ではなくなると考えた。よってパキスタンでのタリバン指導者の再集結阻止に関しほぼなにもしなかった。

 一方、高度に中央集権的な政府構造がアフガニスタン憲法に書き入れられ、民族や部族に首都での権力のシェアを奪い取ることを強いた。結果的に、弱弱しい中央政府に忠誠心を表すことを強いられ、それぞれの地域で影響力を持っていた部族の有力者は弱体化した。

 パキスタンムシャラフ将軍はアルカイダ幹部の逮捕に貢献したが、アメリカ撤退後を見据え、敵対するインドの影響力への防衛手段として、タリバン支援を続けた。アメリカとタリバンの二股をやめさせようと、援助停止や外交的いじめでアメリカは対応したが、インドへの脅威が勝るパキスタンはそれらに対して動じなかった。

 オバマ政権では、西洋教育を受けたガニ大統領のようなテクノクラートが好まれる一方、地元の影響力ある政治家は「軍閥」として冷遇された。そのため民族や部族の現実に反映、対応した政府が作られなかった。一方、高学歴のアメリカの高官たちは、アフガニスタンの力学が理解できず、安定化のためのアメリカの資源を有効に投入できなかった。

 アメリカの訓練したアフガン軍も、アメリカ基準で作られており、低技術国にしてはハイテク過ぎで、技術的アドバイスやメンテナンスを大きくアメリカの請負業者に依存していた。また撤退にフォーカスしたアメリカがアフガニスタン人将校を急いで昇進させており、成熟したリーダーシップが発揮できなかった。

  これらの問題に対応する代わりに、アフガニスタンについての議論は結局のところアメリカの最長の戦争となったということでまとまってしまった。アメリカが直接撤退に関しタリバンと協議したことでアフガン政府はさらに弱体化し、逆にタリバンの士気を高めた。長期の駐留を心配したために、アメリカは自分たちの戦いの相手とした過激派の手の中に、アフガニスタンを戻してしまったと言える。

 

非常によくわかる失敗の原因でした。アメリカの身勝手で、結局2001年のスタート地点に戻ってしまったというご意見です。ハッカーニ氏は、元パキスタン駐米大使で親米で有名だったそう。そしてパキスタン軍と不仲でした。氏は、イスラム過激主義はイスラム世界に出現した最も危険な考え方だとしています。

 

5. リチャード・ハース(米シンクタンク外交問題評議会会長)

 国家建設は失敗するに決まっていたというのが、アメリカのアフガニスタン政策に対する最も基本的な批判だが、問題はアメリカが国家建設を選択したことではなく、国家建設のチャンスが来てもほとんどそれをしなかったことである。2001年秋にタリバンを追放したあとに国軍の育成を加速させ、パキスタンタリバンの保護をやめさせることが必要だった。私は国務省の政策立案スタッフだった時に、アフガン新政府が領土の支配権を確立し軍隊を訓練するため、米軍と同盟国軍の数を一時的に増やすべきだと提案したが、ブッシュ政権はすぐにイラクに目を向けた。

 このチャンスを逃したために、タリバンはますます強力で活動的になり、政府は戦えなくなった。オバマ政権下での兵力増強は、アフガニスタン政府の正当性と米国内での支持を損なうものだった。

 2001年にタリバンを追放した後、アフガニスタンから簡単に手を引くことも同様に間違っていた。欠陥ある権威者を排除した後、公共の秩序と安全を維持し、脅威を無効化し、アメリカの負担を軽減し、政治的自由と経済的機会を育てることができるパートナーを探す努力をしなかったことが悲劇的な結果を招いた。

 

ハースさんは、大国無き時代の到来を予言したりして賢い方だとずっと思っていましたが、ちょっとアメリカ側からばかりの考えにも聞こえますね。中途半端に介入して都合のいい政権を作れなかったのが失敗だったということでしょうか?民族が複雑に絡みあうアフガニスタンでは、アメリカの理想のパートナー探しは無理だった気も。

 

6. リナ・アミリ(ニューヨーク大学、国際協力研究所シニアフェロー)

 アフガニスタンでの国際社会の活動は、アフガニスタン人が所有し、アフガニスタン人が率いるものであるべきという原則が唱えられていたのに、アメリカと同盟国の目的はテロ対策を中心とした特定の目的を前提としたものあった。

 国際的連携でタリバンとの戦いは行われていたが、アフガニスタン人は生活をコントロールできず、戦争を自分のものとは感じておらず、和平や和解の取り組みについても自分たちが主導権を持っているとは感じていなかった。

 トランプ政権での和平プロセスでも、タリバンは交渉相手をアメリカだとし、アフガン政府との交渉を拒否した。アフガン人の自分たちは当事者ではない戦争のために戦い死んでいるという気持ちを増幅させただろう。トランプ政権がタリバンと二国間協定を結んだとき、アフガニスタン人のためという言葉は幻想として滑り落ちた。

 これではアフガン軍がタリバンとの戦いをあっさり放棄したとしても全く不思議ではない。そして後処理を背負うのはアフガンの人々だ。

 

アメリカための戦争と統治だったことは否めませんね。勝手に乗り込んで勝手に去っていったアメリカの傲慢へのアフガニスタン人の怒りを代弁されてます。アミリ氏は、様々な紛争地域を20年以上に渡って見てきたとのことです。メディアの露出が非常に多いようで、これまで知らなかったんですが、かなりの影響力がある女性研究者のようです。

 

7. エリオット・アッカーマン(作家、元海兵隊員でアフガニスタン駐留)

 アフガニスタンでは、「アメリカ人は時計を持っていたが、タリバンは時間を持っていた」というのが定説だった。アメリカはあらゆる面でタリバンを凌駕したが、タリバンアメリカを追い出すまで待つという能力と意志を持っていた。アメリカは現場の状況に基づいた出口戦略ではなく時間に基づいた出口戦略に固執し、それが最大の害となった。

  20年の戦争は長いが、そのほとんどの期間、アメリカは進捗状況に関わらず撤退を表明し続けた。私はオバマ政権時代にアフガニスタンで戦っていたが、地元の指導者は、アメリカが18か月後に出て行ったあと、タリバンの影の知事は残るのに、どうやって新しい道路計画や女子校の支援ができるのかと尋ねた。タリバンが脅威でなくなるまで私たちはここにいるからと言えていたら、戦争の終わり方は違っていたし、もっと早く終わっていただろう。

  国内、特に政権の汚職もよく語られていたが、撤退までの時間にこだわったことが腐敗の心理に影響を与えてしまった。アメリカの目的のために命をかけることを我々は彼らに求めていたのに、もうじき去ると伝えたことで資源を吸い取ることがアフガニスタン人の保険になっていたのだ。米軍は縮小で、最終的にはタリバンに引き渡されると約束されていたときに、他にどんな選択があっただろう。

 我々はこの期に及んで過去の過ちからの教訓を学んでいない。残された人々を脱出させなければならないが、撤退期限の8月31日は設定済みでミッションは終わらない。

 

結局タリバンの忍耐力に、初めに予定通りの撤退ありきのアメリカはかなわなかったということです。アッカーマン氏は、海兵隊の特殊作戦のチームリーダーとして、タリバン上級幹部捕獲作戦で700人からなるアフガン戦闘部隊の主要戦闘アドバイザーを務めていたとのこと。実際に現地にいた人なので、実情をよくわかっていたようです。時計と時間のくだりは非常に面白い見方だと思います。

 

8. ロイ・スチュワート(元イギリス閣僚、イェール大学ジャクソン研究所フェロー)

 2005年から2011年まで、米と同盟国はアフガニスタンを世界の安全保障上の「実存の」脅威と見て、タリバンを完全排除し、民主的な中央集権国家を作ることを目的とし、兵力と資金をつぎ込んだ。

 しかしバイデン政権発足前にその時代はとっくに終わっており、戦闘行為も終了して2500人の米軍しか残っていなかった。2016年以来犠牲者もほとんど出ていない。国家建設は理想通りにはいかなかったが、女子教育が再開され、人々は健康になり寿命も延び、これまで存在しなかったビジネスや文化を若者がすることもできるようになった。

 バイデン大統領は、このまま持続可能なアメリカのプレゼンスのための新モデルとしてそのまま継続することもできたのに、すべてをひっくり返した。4月まで懸命に戦い続けたアフガン軍は、突如裏切られ支援を断ち切られた。能力の喪失や士気の低下が、軍の完全崩壊を引き起こしタリバンの手に落ちた。

 この問題はアフガニスタンに留まらない。なぜアメリカはわずか10年足らずでその外交政策、同盟関係、利益についての前提をひっくり返し破壊することができるのだろうか?なぜ信頼から極度の絶望と無力感に傾くことができるのだろうか?なぜ忍耐と節度が保てないのだろうか?

 

これも成果はなかったわけではないのに、さっさと見切りをつけて信頼を失うような幕引きをする必要はなかったという厳しい意見です。スチュワート氏は、アフガニスタンに実際に住んだこともあり、英米などでアフガニスタンイラクに対する助言を求められることが多いそうです。オバマ時代の大規模駐留という戦略は地元民を遠ざけてしまい逆効果で、小規模な軍を置いたほうがよいと提案した人物でもあります。

 

9. カーター・マルカシアン(歴史家、元アフガニスタン米軍司令官顧問)

 アフガニスタンでは勝利の可能性は常に低く、出口も非常に複雑だった。このような戦争を泥沼化させないためには、広く前向きな戦略的思考が必要だったが、アメリカは視野が狭く先を見る目がなく、戦費を抑えてアメリカ人の命を救うという選択肢を排除した。

 ブッシュ政権タリバンとの和平交渉を模索し、より有能なアフガン軍を構築していたら、アメリカの負担は軽くなっていたはずだ。オバマ政権では米軍部隊を大量投入し、大きなコストと人的犠牲を払ったが、状況を大きく変えることはなかった。トランプ政権に至っては撤退一辺倒で執行困難な合意を求めたため、今の状況をもたらすことにつながった。

 いずれの政権も先を見ることができず、期待に反した情報を軽視し、低コストでできる予防策を拒否することもしばしばだった。軍はまず戦争に勝つことを求め、次に戦争に負けることを避けた。文官は単一の未来にコミットし、見通し通りにいかなかった場合、不測の事態についてよく考えることをしなかった。

 

とにかく戦争に勝って終わらせようとしたことが、別の選択肢を考えさせなかった。長期的展望なく撤退を急いだことで、今の大失敗につながったという見方です。マルカシアン氏は、アフガン政府が民衆の支持を受けられなかったのは、外国の占領勢力とみなすアメリカが付いていたからという見方を自著で示しています。自分の利益しか考えないアメリカより地元を知るタリバンのほうがまだわかりやすかったということなんでしょうね。

 

本当は数日前に出すはずだったのですが、いろいろ忙しく今日投稿になってしましました。不確かなところもあるかと思いますが、ざっと識者の意見を見回すと、「アメリカはテロ対策のためにアフガニスタンに侵攻したため、そもそも地元の人のことなど深く考えていなかった。自分たちの好きなスタイルで国家建設をしようとしたが、現地についての勉強不足で空回り。うまくいかないならさっさと出て行こうと割り切り、撤退を急いだため今の惨状となった」というのがほとんどの見方です。

 

複数の識者が、少人数で現状維持の駐留&統治をしていれば、何も問題はなかったという見方ですね。実は被害と経費が最も大きかったのはオバマ時代で、以後犠牲者も経費もそんなにかかっていなかったというのは知りませんでした。

 

アルカイダを追ってアフガニスタンに侵攻したのは理解できるんですが、この記事を読んで思うのは、こんなにたくさんの人がアメリカの間違いに気が付いてたのに、なんでこれまで修正されてこなかったんだろうということです。まあみんな後からだったら何とでも言えるということもあるのでしょうが、アメリカも自信はなく迷いに迷いながらアフガニスタンという異文化の中で戦っていたのかもしれません。

 

 

中国の援助にタリバン期待!でも中国は意外と冷めているかも…

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ErikaWittliebによるPixabayからの画像

前回の記事、結構読んでいただけたようです。コタツ記事ライターとしては大変うれしく思います。 なので本日続き。

今日は東京大学の鈴木一人先生のツイートからネタ拝借。

 

アメリカが去ったあと、中国がタリバンへの影響力を強めるという見方が多いのですが、タリバンのほうも歓迎のようです。

www.reuters.com

タリバンの広報担当者の話なんですが、平和と和解を促進することにおける建設的役割だけでなく、国の再建への貢献も中国には期待してるそう。中国の王毅外相は穏健なイスラム主義政策をタリバン側に求めたということですが、どうなんでしょう?当面中国はアフガニスタンにとっては重要なプレーヤーとなることは間違いないようです。

 

しかし、中国の中にはとっても冷静な意見があるようです。

m.aisixiang.com

なんと、コタツライターは中国語にも堪能だった!わけないでしょ(笑)。以前シンガポールに住んでいたので中国語が聞こえてくると音はわかりますが、意味はさっぱり。現地の友達の名前さえ10年以上発音間違って呼んでましたし…。ましてや文章などレストランのメニューぐらいでも半分以上分かんないですっ。

 

実は翻訳ソフトDeepLを使うと、かなり素晴らしい日本語になるのでした。これまでの使用経験から大幅に間違っていないと思いますので、訳して読んでみました。著者は梅新育(メイ・シンユ)さんという経済学者で、中国商務部の国際貿易専門家だそうです。その概要が以下です。分かりにくいところは勝手にこうであろうと思って書いてるのでご承知ください。

 

中国は米軍の敗北という喜びに浸ってはならず、アフガニスタンが平和に発展し、無限のビジネスチャンスがある国だと思ってはいけない。目を覚ましてアフガニスタンの歴史を学ぶ必要がある。

 

アフガニスタンというのは、社会的結束力が弱く、国家より部族や宗教のアイデンティティが重んじられ、さらに宗教より宗派のアイデンティティが強い国だ。よってアフガニスタンの歴史は、裏切り、陰謀、宮廷クーデター、内戦、人気政治家の反乱に対する脆弱性といった分かりやすいものだった。なので、タリバンがしばらく政権を維持したとしても、これまでに奪った戦利品を使い果たしてしまえば経済的圧力をうけることになり、それは遠いことではない。

 

過去2世紀のアフガニスタンの混乱は、戦争と略奪という伝統的な「捕食国家」システムがすでに廃れてしまっているのに、現代社会に対応できる持続可能な経済・産業基盤を構築できなかったことが原因だ。

 

よって政権交代アフガニスタンの慢性的な食糧問題を悪化させる。アフガニスタンでは食糧生産量は1978年をピークに減少。2001年に米軍がタリバン政権を倒してからは環境改善と国際援助で食糧生産は大きく回復したが、人口も増加したため一人当たりの食糧生産量は結局減少している。

 

需要と供給のギャップは、この20年間国際援助で埋められ、それは欧米からが主だった。しかし政権交代で、援助は削減、停止されており、欧米とインドからの援助は当面再開されない可能性が高い。新政権は食糧問題でかつてないほどのプレッシャーさらされている。

 

アフガニスタンの非農業分野の開発環境も厳しい。過去20年間は建設業が最大の成長分野だったが、建設需要のほとんどは国際援助の投入によるもので、政権交代後はこれらの産業のほとんどが停止する。一部で期待されている鉱物資源にしても、大規模開発には治安と秩序の維持が10年は必要だ。さらに山間部や高地での開発にはインフラ整備が必要で輸送コストも法外だ。よって過度の期待は禁物である。鉱物資源が豊富だと言われていても、アフガニスタンの経済・社会全体を困難から引き上げるのに十分とは言えないだろう。

 

さらに国際関係が鉱物資源開発の大きな障害になっている。過去にソ連の援助でガス田を稼働させたが、1970年後半からの戦争で天然ガスの生産は急減。そのうえパイプラインはタリバンとの関係の良くない中央アジア諸国につながっている。インドやパキスタンに輸出を転じても、生産量が不十分で、新たなパイプラインへの投資をカバーできるほどの販売収入は見込めない。

 

アフガニスタンは「文明の十字路」にあり、一帯一路構想に重要だという主張も密室での空想だ。アフガニスタンは15世紀以降、国際貿易システムの中で完全に疎外されており、これが社会の孤立化、退化、部族化を加速させた原因だ。輸送システムの現代的発展で、アフガニスタンが国際貿易システムから疎外されている傾向はむしろ悪化しており、一帯一路にはあまり重要とは言えない。

 

中国は2001年からアフガニスタンに多くの援助を行ってきたが、政権交代後はプロジェクトのかなりの部分が失敗する可能性があり、育成した技術者や専門家も海外逃亡すると思われる。

 

以上のことから、中国はアフガニスタンの内政に干渉すべきではなく、国民の選択を尊重するべきだ。ポスト米国時代の経済・貿易については冷静かつ客観的に判断する必要があり盲目的に反故にしてはならない。短期的には、支払いと安全が保証されているという条件で、生活必需品をアフガン市場に積極的かつ安定的に供給することはできるが、大型投資は減速すべきだ。

 

ということです。近隣国だけによく研究してたんですね。欧米メディアは中国がどしどしアフガニスタンにやってくるかのような見方をしているところもありますが、商務部の一人の専門家の意見とは言え、やはり中国はしたたか。「帝国の墓場」と言われたアフガニスタンで、ホイホイとアメリカの代わりを引き受けるようなことにはならないようです。

米撤退は中国にもマイナス。アフガニスタンでタリバン政権復活か?

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David MarkによるPixabayからの画像

日本全国大雨のお盆ですが、海外でもいろいろトラブルがありますね。

コロナは国内で入院できないほどの感染大増加。ハイチではまた地震。そしてアフガニスタンからの軍撤退を決めていたアメリカは、タリバンの猛攻勢で予想外に早そうな首都カブールの陥落を前に、大急ぎで大使館職員らの退避を進めているようです。

 

アフガニスタン情勢って、しばらく忘れてました…。なので短くおさらい。そもそもアフガニスタンって王政から共和制に1973年に移行。その後紛争が続き1996年にタリバンがカブール占領するもまたゴタゴタ。オサマ・ビン・ラディンアルカイダを匿っていたタリバンアメリカが攻撃し、アメリカに守られた新共和国が2001年に成立。しかしずっとタリバンも粘っていてなくなったわけではなかった。で、いつの間にやらトランプ政権時代にアフガニスタンから米軍は完全撤退することが決まっており、徐々に撤退が進行。タリバンのほうは攻勢を強めて現政権は崩壊しそうな勢いなんですが、今のバイデン大統領がそれでも撤退すると言い切ったわけです。

 

その理由はこちら

jp.reuters.com

 

現時点でもグダグダで米兵の犠牲が多い戦争は勝ち目がないと見限って泥沼化する前に出ていこうと思ったようです。

 

じゃあこれからアフガニスタンはどうなるの?と思って、いくつか記事を読みましたところ、なかなか興味深いことが分かってきました。ソースは以下。

www.reuters.com

www.wsj.com

warontherocks.com

 

世界の警察アメリカがいなくなると、当然アフガニスタンタリバンの手に落ちそうです。アメリカを狙うテロが復活する心配もあると思うんですが、実はアメリカが出ていくことで困ってしまう国があるようです。

 

記事に書かれていたのは、ロシア、中国、パキスタン。ざっくり説明するとこれらの国はイスラム過激派が台頭すれば、自国もイスラム教徒を抱えているため、治安上の心配が増してしまうということです。今までアメリカがアフガニスタンを見張ってくれていたために助かっていたわけですが、撤退されると今後は自分たちでその危険の目を摘む必要があるわけです。

 

で、もっとも微妙なのが中国。中国はすでにタリバン幹部と会い、この感じだとタリバンが軍事力で政権を奪ってしまえば、それを承認するんじゃないかと言われています。中国は、ロシアやアメリカと違ってタリバンと戦争をしたことがない大国です。すでに大型投資や援助をタリバン側に約束しているとも言われ、経済で懐柔するつもりのようです。

 

タリバンにとっても、中国は他国の内政には干渉しないという政策を取っている上に、中国から信任されることで国際的な政権の正統性を確保できる、アメリカなどを今後けん制できるという利点があると見られています。

 

しかし、アメリカの撤退は中国の対外政策に大きな不安をもたらす可能性も指摘されています。中国の一帯一路構想は、パキスタン、イラン、ロシア、中央アジアなどに展開していますが、米軍が去ったあとアフガニスタンから暴力が広がることで不安定になるのではないかという見方もあります。

 

これまで中国はアフガニスタンでの鉱山や油田への投資で大失敗をしているとのこと。ただでさえ面倒なことだらけのアフガニスタンのプロジェクトなのに、政治的な不安定さと安全保障上の脅威がどうしても投資拡大を妨げるということです。ここでも米軍撤退がマイナスになっており、今後大規模投資が促進するとは思えないという意見があります。

 

政権を取れば、タリバンは過激派的な政策を抑制するという考えもあるようですが、タリバンの近代化ついては中国内でも不安視されているとのこと。ただ、中国政府はアフガニスタンにおいてはタリバンと協力するしか他に選択肢はないと考えているようです。

 

アメリカも中国においしいところだけ取られてたことに気づいたんですかね。米中対立してますので、地理的にも遠く、経済的メリットもないアフガニスタンに長居するより、中国に任せてお手並み拝見というのもアメリカ的には確かにありのようです。世界の勢力図にも影響を与えそうなアフガニスタンからの米軍撤退、今後を注視です。

感染者数減ってる?経済再開したイギリスの新型コロナ感染状況

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Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像

実は私、ワクチン接種2回終了しております。6月に入り、自衛隊の大規模接種会場に高齢者の予約が少なくて枠が余っており、高齢者じゃなくても予約可能になったという報道がありました。そのニュースを見た翌日ぐらいになんと接種券が到着。せっかくワクチンがあるのに時間枠を余らせてはもったいないと思い、自衛隊の予約サイトに行ったところ、余裕で予約できました。わが自治体のファインプレー!のおかげで私にもおこぼれが回ってきたわけです。

 

で、1回目は6月後半に受け、腕が痛くて若干ぼーっとする(酒飲んだからかも…)以外は副反応なし。「やっぱりおばさんだから反応薄いんだわ~、ワクチンちょろい」なんて思っていたわけですが、2回目は違いました。五輪が始まったころに受けたんですが、当日は腕が痛い以外は全くなにもなし。しかし翌朝起きたら結構な筋肉痛&関節痛で、慌てて体温を計ると37度でした。そんなに高くもないので、そのまんま横になってたんですが、なんかだんだんぐったりしてきて、また体温測定をしたところ37.7度。完全に発熱してました。

 

ネットとか見てると40度近くになっている人もいたので、私も?と思い不安になってきました。横になってるしかないので、テレビつけっぱなしでそのまま五輪観戦に突入。幸いなことに熱が39度近くなったところでノーシン飲んで救われ、あと体が痛いだけで頭痛はなかったので、ワールドクラスの戦いを満喫してしまいました(笑)。

 

その夜には熱も下がって、結局大事には至りませんでした。これから接種される方は、2回目の後は何もしなくていいように前日に業務を片付け、接種後は寝る・横になるだけ態勢を整えられるとよいと思います。会社もできればお休みが安全ですね。

 

さて、本日はイギリスのコロナ状況。ワクチン接種率が高いため、経済再開したのですが、マスクもなければパブも大入りでコロナ前に戻っており、これだと感染すごい増えるんではないかと心配していました。政府は感染増えても死者は増えないという考えのもと、10万人感染しても許容としていましたので、個人的にはすごいギャンブルだと思っていました。

 

ところが、感染減ってたんですわ。

www.bbc.com

 

これ6日前ぐらいの記事ですが、5日連続で減少とのこと。原因としては、政府のデータの更新に遅れがあるからではないかとBBCは指摘しています。7月19日にロックダウン全面解除でしたので、今の段階ではその影響は感染者数には表れないということです。

 

その後、7月29日付け記事ですと2日連続で増えてますね。やっぱり…。

www.theguardian.com

一時感染者数が減ったのは、実は検査数が減ったからという指摘があります。専門家の話ですと、約20%ほど検査数が減っていたということです。政府のデータでも7月22日から28日まではその前の7日間と比べ14%強減っているということですね。

 

検査が減った理由ですが、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのヒュー・モンゴメリー教授によれば、症状があって検査を希望する人が減ったということもありますが、検査を避けている人が増えていることも考えられとのこと。そのため感染者数が減少しているように見えたのかもということです。

 

検査を避ける理由として、なんと「夏の休暇旅行に行けなくなるかもしれないから」が指摘されています。この辺イギリスらしいですよね。かかっても、どうしても夏は出かけたいらしい…。

 

モンゴメリー氏によると、ワクチン接種率も横ばいになっているそうで、75~79歳の95.5%が少なくとも1回は接種を受けているのに対し、25~29歳では59.9%にとどまっているそうです。92人の予約に対し実際に来た人は8人という接種会場もあったそうで、打たなくても平気っていうムードになってるんでしょうか(汗)。多くの人が完全にワクチンを接種していない状態で制限解除をすると、あらたな変異株ができるという懸念もあるそうです。

 

レディング大学のサイモン・クラーク博士は、現在のデータセットは「カオス的」であり、様々な要素が同時期に合体したことを反映しているとしています。制限解除直後ですから確かにそうでしょうね。全体的な傾向として、感染減少となっていることに希望が見出されているが、たった数日の感染数で将来は予測できないとクラーク博士は述べています。さらに今後のデータを注視する必要があるといえます。

 

日本は間違いなく現在感染爆発ですね。東京は感染者数4000人を本日超えたということですが、こちらも検査が足りていないのかもしれず(五輪のほうに検査キャパが回ってるという説も)、実際はもっと多いのかもしれません。

 

日本の接種率はイギリスほどではありませんが、あと数か月でかなり高くなるのではないかと思います。インパクトのない緊急事態宣言がまた各地に出ることになりましたが、もう少しワクチン接種が増えるまで、人との接触を各自が減らしていくしか策はないと思います。私も飲み屋に行く夢はもう少し先まで取っておき、引き続きマスク着用でがんばります。