UK9報道部

良質な「コタツ記事」を目指します。海外ニュースがメイン。

キャンセルカルチャーの対象?社会派小説「アラバマ物語」、米で必読図書から除外に

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ここ数年、キャンセルカルチャーという言葉をよく耳にします。

ウィキペディアによりますと、「主に著名人を対象に過去の言動を告発し、それに批判が殺到することで、職や社会的地位を失わしめる社会現象や社会運動」と解説されております。だれかの過去を引っ張り出してきて糾弾することで、その人を社会から消す、というなかなか恐ろしいブームです(汗)。

 

発祥はアメリカなんじゃないかと思いますが、欧米で広まり日本でも東京五輪の関係者などの問題などで炎上しましたね。実は私はこれに関してはすごく懸念していまして、いろいろ以前から書いています。最初に書いたのはこの記事だったかなあ。

newsphere.jp

はてなブックマークで翻訳が下手とのご意見をいただきましたが、結構議論の種にしていただいたと思います(記事は翻訳を朝始めてその日のうちに納品してまして、当時は機械翻訳も使っていなかったため荒いことは確かです。悪しからず…)。若者は他人の非を見つけて拡散することで世界が変わると思っているようだけど、それって違うから、というオバマ元大統領の意見。まさに石を投げるだけでは建設的ではないということです。

 

続いて書いたのがこれかな?

newsphere.jp

BLMが盛り上がってキャンセルカルチャーが歴史上の人物にまで飛び火してしまったというニュースでした。実はこれは写真の女性の胸のポチに注目が集まって一部PVを稼いでしまったという不本意なネタではありました(笑)。しかし負の歴史というのは世界にたくさんあるんですが、破壊で葬り去ろうとする動きはちょっと日本では考えられないかと…。下手すると歴史の書き換えにもなりそうです。

 

お次はこれ。

newsphere.jp

こちらはアイビーリーグの名門大に入った元脱北者の女性が見たアメリカのリベラルの闇についてです。学生が自国の歴史を批判し、過度に政治的正しさを求めており、それに疑問を呈すことさえ許されない状況だと。これじゃ北朝鮮と同レベルじゃないかという率直な感想でした。こういった内容は、実はアメリカの保守系メディアがセンセーショナルに取り上げるんで、全部を思い切り信じることはできないと思いますが、逆の意見を言えない状況になっていることは大きな問題だと思います。

 

前振りが最高に長くなってしまいましたが、いよいよ本題。

www.seattletimes.com

ワシントン州マカルティオ教育委員会は、有色人種の生徒たちへの悪影響を懸念し、9年生(日本の中3?)の必読図書から1960年に出版された「アラバマ物語(原題:To Kill a Moking Bird)」外すことを決めたということです。

 

この作品は、レイプの濡れ衣を着せられた黒人男性を弁護する白人弁護士の活躍を描いたもので、ニューヨーク・タイムズ紙の読者が選ぶ過去125年間のベストブックに選ばれています。ネットで検索すると、必読図書にはワシントン州以外でもたくさん入っている感じですね。私も原文で読んだことがあるのですが、非常に悲しくも心に響く名作でした。映画にもなってますがそちらは見たことはないです。

 

もっとも昔の物語ですので差別的な内容や言葉がかなり含まれており、出版以来人気作品であり続けている反面、物議を醸すこともしばしばだったそうです。米図書館協会が毎年発表する「最も挑戦的な本」のリストにほぼ毎回ランクインしており、人種差別に関する理由で異議申し立てが頻繁にあったようです。

 

マカルティオ教育委員会が必読書から外した理由は、古典的な小説に見られる人種差別の懸念からだということ。もっとも禁書になった訳ではなく、教師が自発的に教えることは可能だそうです。

 

教育委員会のメンバーの一人は、本は非常に難しいテーマを含んでいるため、教師側も指導しにくいかもしれないとしています。また、人種差別を扱うだけでなく、差別が容認されていた時代を反映しており、ヒーローとして皆が記憶している弁護士も、自分の周りの人種差別に対してはある種寛容だったと述べています。本の中には、差別用語が有色人種に与える苦痛という視点もない、と厳しい意見です。

 

教育委員長は、自分の子供たちがこの作品を読んだときには、今議論されているような問題は全く出てこなかったとしつつも、今回の判断は最終的に委員会メンバーが生徒にとって最善と考えた結果だとしています。

 

この決定、やはり最近のBLMやポリティカルコレクトネスを意識したものなんでしょう。しかし個人的には過去に書かれた作品が今の価値観にふさわしくないからパスしようというのは賛成できません。黒人の子供たちにはつらく怒りを感じる内容なのかもしれませんが、この本に書かれていることが当時のリアルであり限界であったと知ることも大事ではないでしょうか。ここからさらなる公平を目指し進んでいく材料にしようと教師が指導することもできると思います。

 

ひどい、汚い言葉が多く子供たちの気持ちを傷つけるという意見もありますが、今の子供たちはネットやゲームでもっとひどい表現に出くわしている気も…。その辺は私はアメリカ人ではないので分かる人に聞いてみたいところです。

 

別の記事は、この本が白人の視点から書かれ(著者は白人です)、白人を救世主としたことが問題だという意見でした。白人の視点だから不適切=加害者が加害者の視点から差別を語るのはダメ、という考えが支持されるなら、同様に被害者が被害者の視点だけで物を見ていてもだめなんじゃないでしょうか。この記事では、解決策として黒人作家の作品も入れて人種問題を教えてはどうかと述べています。私もこれはより建設的だと思い賛成ですね。

 

最後になりましたが、この本は差別をする側に罪の意識を経た正義感をもたらすという点では必読だと思います。気分は白人ヒーローになったとしても、白人の学生は読むべきではないでしょうか。シアトル・タイムズに書かれていたニューヨーク・タイムズの読者の声をご紹介して終わりにしたいと思います。

 

私は小さく閉鎖的な西部の白人プロテスタントの町で育ちました。この本は私に人種差別の残酷さを初めて教えてくれたのです。この本が私の人生を変え、私を社会正義を大切にする人間にしてくれたのだと信じています。

 

環境に配慮は嘘?香港、コロナ隔離でゴミ増加

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今日はトンガ付近の海底火山の大噴火で、日本に津波警報などが出て結構な大事件になっています。噴火の衛星写真、超特大で怖いなぁ(汗)。「日本沈没」のドラマをこの前見たばかりなので、びびっております。日本では怖いのは地震津波だったんですが、噴火&津波の心配も加わりました。加えて目先の脅威はコロナですから、世紀末なんでしょうか、と暗くなったり…。

 

心配と言えば、ゴミ問題も結構なものですよね。これも世界の課題ですが、こんなニュースを見つけました。

www.scmp.com

 

香港では、コロナ隔離用ホテルの滞在者が使ったプラスチック容器類は、なんとすでに1億個を超えているということ。香港で3週間のコロナの隔離を経験した人が、大量に出るプラスチックごみを減らそうと期間中プラスチック容器などをほとんど持ち込まないことになんとか成功したそうです。

 

そもそもホテル到着時点で水のボトル、テレビのリモコンカバー、小分けのコーヒーの袋などが部屋に置いてあり、翌日からはプラスチックカップ、紙コップのふた、調味料の袋などが配布されたそうです。加えて知り合いが持ってきてくれた差し入れ品により、65個もプラスチック容器が増えてしまったとか。そこでプラスチック容器で提供される飲料や食品を避け、水のペットボトルも再利用するなどし、3週間のうち17日間はほぼプラ持ち込みなしで過ごしたそうです。えらい!

 

しかしこの頑張りにも関わらず、実はさらにプラスチックを使っていたことが判明しました。滞在していたホテルでは、毎回の食事を「生分解性」段ボール容器で提供していたのですが、これは純粋に紙だけで作られているわけではなく、油や液体が漏れないようプラスチックコーティングが施されていたとのこと。ゴミは埋め立てられますが、紙の部分は分解されてもプラスチック層は1000年も残り、その間にマイクロプラスチックとなって汚染を広げることになります。

 

米疾病管理予防センター(CDC)が物からの感染の可能性は低いと言っているにも関わらず、使い捨て容器が使われているのはどうなのか、ということで、再利用できるカトラリーを使ったり、歯ブラシやかみそりなどのアメニティもリクエスト制にするホテルも出てきたそうです。実は客のチェックアウト後に残されたホテルのアメニティは、未使用でも廃棄という決まりがあるそうで、ここが大きなロスになっているということです。

 

もっともホテル関係者は、この使い捨ての文化は宿泊客によって変えられなければならないとしています。結局生分解性の容器も、「環境に配慮している」という主張でしかなく、よりよい方法は使い捨て容器を出さない、つまり再利用可能なものを使うことだと述べています。また、ホテルを出るときに大きなリサイクル品でいっぱいの袋を抱え、近くのリサイクルボックスに投入する客もいるということですが、そもそも香港のプラスチック製品のリサイクル率は10.8%しかないということ。多くはリサイクルされず、善意の自己満足で終了する可能性が高そうです。

 

この記事の筆者は、やはり使い捨てより再利用のほうがまだ環境を守る可能性が高いとしており、我々が毎日頼りにしている製品の「グリーン」という主張は多くの場合嘘だとしています。マーケティング上手ともいいますよね。

 

私は隔離経験はないのですが、日本の場合はどうなんでしょうか?三食お弁当のようですから、やっぱりプラスチック容器は山ほど使われていると思いますね。ただ、日本は埋め立てより焼却が多いようですので、ちょっとはマシかも。だからといってゴミをたくさん出すのはやはり環境にはマイナスでしょう。コロナで世界的にマスクのゴミも増えているようですし、ホント、早く収束してほしいです。

 

 

砂漠にハリウッド?映画制作に乗り出すサウジアラビア

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あっという間に年末。私は28日に仕事納めをしまして、3日までお休みです。いろいろあった1年でした、と言いたいところですが、何があったのか悩むぐらい単調な1年であった気がします。子供たちが家を出たことと、コロナ禍であまりイベントがなかったことが大きく影響したかなと。

 

とは言え、楽しいこともしたいので、今年は映画館にできるだけ足を運ぶようにしました。大作はオンラインで見れることが多いので、ちょっと地味な映画を中心に結構見ましたね。クルド人の難民申請者の子供たちを描いた「東京クルド」、アフガニスタンから欧州に渡る難民一家が携帯で撮った作品「ミッドナイト・トラベラー」、自由だったころの香港が美しかった「ホアジャオの味」なんかよかったですね。

 

村上春樹の作品をもとにした、「ドライブ・マイ・カー」も見ましたが、正直演劇のシーンが長すぎて辛かったです。映画は原作からイメージして作られていたということで、そのあと原作を読むことになりました。実は私村上氏の初期の作品が大好きでした。いまでも「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はなんども読み返すぐらい好きです。

 

若いころはよかったんですが、おじ(い)さんの年になった村上氏のしつこいオナニーやセックスの描写に辟易して、しばらく村上作品から離れていたのです。村上氏ってハンサム系ではなく、どっちかというとバカボン系の顔(すみません…)で初老を過ぎて性的なものをおしゃれっぽく書かれるギャップに読者として適応できず。でも「騎士団長殺し」ぐらいからやや薄まった感があり(笑)、読んでもいいかなと思えていたんです。今回も映画の原作の収められた「女のいない男たち」も相変わらずセックスが多いんですが、以前の違和感がそんなになく読めました。文章は素晴らしいですよね。

 

あれ、本の話になっちゃったので戻ります。

さて、映画つながりで面白い記事を見つけました。これ。

www.economist.com

 

知らなかったんですが、サウジアラビアって2018年まで約35年間映画館が閉鎖されていたらしいです。70年代まではやっていたらしいんですが、「アラブ世界におけるイスラム教の影響力拡大に伴い強い権力を持つ聖職者らが映画館を閉鎖した」と、2018年のロイターの記事に説明されていました。2017年に皇太子が経済改革・社会改革の一環として解禁に踏み切ったとのことです。

 

今回のネタ元、エコノミスト誌の記事によれば、サウジは「砂漠のハリウッド」となるべく、外国映画の撮影誘致や、映画祭開催など意外な取り組みを始めているそうです。映画館も、すでに500以上のスクリーンが国内にできているとのこと。

 

映画産業への回帰は、3つの理由からきているとか。1つ目は石油に頼らない産業が必要だから。2つ目は、政治的抑圧に直面する若者を満足させたいから。3つ目は国際的にひどい自国の評判を高めるため、ということです。分かる気がする。

 

まずは映画産業は国内の観客を増やすことが第一の課題ということで、アラブ首長国連邦などからの投資も入り好調なようです。ロンドンの調査会社によれば、客単価の高い劇場が多く、2025年には世界第10位規模の興行収入になると予測されています。ほう。

 

次のステップは、海外の製作者を招くこと。ハリウッドとの共同制作が進行しており、一つは7世紀のアラビアものという鉄板テーマらしいです(笑)。サウジの魅力は、なんといっても砂漠。灰色から赤色まで様々な色の砂漠があり、アフガニスタンでも火星でも、あらゆる砂漠のイメージが実現できるそう!やはりセットよりリアルな砂漠が映画制作側には好まれるということです。さらに魅力的なのは資金面。サウジアラビアフィルム・コミッションが映画製作者に最大40%のリベートを提供するという好条件になっているそうです。さすが産油国

 

もっとも、ゼロから映画制作を始める苦労もあるそうです。まず近隣のヨルダン、エジプトなどとロケの誘致合戦や映画祭の日程重複などで揉めたりしているということ。また、大量のエキストラやフリーの長時間労働をするスタッフなどを探すのにも苦労しているようです。サウジ政府は、こういった問題解決のために、映画制作を教えるブートキャンプなどを計画したり、共同制作でハリウッドのやり方を学ばせるという方法を取っているそうです。かつての中国も共同制作でノウハウを学び、国内でメガ作品が作れるようになったとのこと。さらにサウジでは、国内のネオムという場所にデジタル産業に特化した都市を作り、メディアハブとする構想があるそうです。

 

映画制作への最も大きな障害は、やはり文化的、政治的に保守的な環境だとエコノミスト誌は述べています。同性愛が犯罪で女性はアバヤという黒の長衣で全身を隠すのが主流。イスラムの習慣やルールは、ハリウッドの人々にはハードルがまだまだ高いと見ています。サウジ当局は映画産業振興のために、ネオムのような「中国にとっての香港」のような特区を作って自らの主義主張を曲げる用意もあるようですが、どうでしょうかね。

 

サウジ側は行く行くは自国の言葉で自国の物語を映画にし、世界に売り込みたいたいようです。世界的ヒットになった「イカ・ゲーム」の成功で、視聴者の好みがより国際的になったと見ているようですが、エコノミスト誌はその目論見に関しては懐疑的です。

 

イスラム原理主義ですが、イランだと日本でもファンが多い芸術的映画作品はたくさんありますよね。そもそもイランは昔はもっと自由だったので、その時の影響もあるんでしょうかね。ただハリウッド的なスキャンダル満載テーマはなさそうです。

自由な芸術とサウジの超保守的イスラム社会がどのように調和するか注目ですね。村上作品はかなり無理かも(汗)。

 

それでは皆様よいお年をお迎えください。

 

 

 

 

新たな変異株を生む可能性も。メルク社の経口治療薬モルヌピラビルに懸念

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久々にブログ書いてます。

ここ1か月親戚が亡くなったり、息子がPCを盗まれたりと、なぜか大忙しの私でした。

PCは出てこないな~。シェアハウスの共用スペースに置いていて、ちょろっと席を外していた間に盗まれたということでしたが、息子よ、お前は本当に世間知らず。世の中には悪い人もいるんだよ、と叱っておきました。当然新しいのは自分で買え、と冷たく突き放しましたが、やはり世の中には拾う神あり。ガジェット好きのシェアハウスの社会人のお友達が、自分の持っている古いMacbookをくれたそうです(涙)。ちなみに当時書いていた大学のレポートはPCにしかセーブしてなかったので、最初っから書き直しになっちゃったとのこと。これに懲りて、今後はものを置きっぱなしで離れるな、です。

 

さて、最近オミクロンで世界は大騒ぎですね。ワクチンや薬が効かなくなるのではという心配も報じられています。コロナの飲み薬では、「モルヌピラビル」というのがもうすぐ日本でも特例承認されるということ。読売新聞によりますと、発症早期の継承から中等症の患者が服用すると、ウイルスの増殖が抑えられて重症化を防ぐとされているそうです。家で飲めるので、医療機関の負担も減ると期待されているようです。

 

ところが、こんなツイートを見つけました。

ワシントン大学の進化生物学者、カール・バーグストローム教授のものですが、この薬の安全性についていくらか心配しているということです。今回も機械翻訳さんと一緒に訳していきます。

 

教授によれば、モルヌピラビルは「致死突然変異誘発」を引き起こすことによって作用するとのこと。ウイルスに多くの突然変異を起こして弱らせ、免疫系がそのウイルスを取り除くことを可能にするのだそうです。

 

しかし、「亜致死的突然変異誘発」というリスクがあるとのこと。この場合ウイルスは広範囲に変異するものの除去されず、多数の突然変異を伴う新しい遺伝子型を作成します。ウイルスを排除することなく変異を加速するプロセスが問題となるかもしれないということです。

 

「亜致死的突然変異誘発」が起こる可能性は多くの証拠で示唆されており、特に重要なのは入院のリスクがある患者における可能性とのこと。モルヌピラビルを使用した患者の6%以上が入院を必要とするそうなのですが、慢性感染症の場合、この薬剤は原理的にウイルスの進化を促し、より広まりやすく、より重篤な病気を引き起こす、より危険な新株へと変化させる可能性があります。次のオミクロンなど誰も欲しくないのに。

 

さらにモルヌピラビルは40錠をわずか5日で服用することになっていますが、服用回数を守れなかったり、全量服用完了できなかった患者では、亜致死的な突然変異誘発の可能性が特に高いと考えられます。

 

モルヌピラビルは患者個人には利益をもたらしますが、何か問題が発生し新しい変異株への進化を助けることになった場合は、社会全体がその代償を払うことになります。すべては推測の域を出ないということは強調したいと教授は言っていますが、有効性や患者の安全性に加えて、「外部性」も考慮すべきだとしています。

 

うーん、なんか日本政府は買う気満々みたいなんですが、ちょっと心配ですね。ちなみにバーグストローム教授は、ファイザー製の経口薬のほうが患者にも他者にもよいと考えているようです。

 

コロナはまさに変異株との戦いとなってきましたので、人類自ら新たに強力な変異株の創造をしてしまうことは避けたいですね。あーあ、世の中本当に難しくなってます。

 

シュクメルリからチキンキエフまで。ソ連は食の宝石箱だった?

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Pete LinforthによるPixabayからの画像

松屋のシュクメルリがしばらく話題でしたよね。ジョージアのお料理です。

私は吉野家はあるけど松屋(家から5分で行けるけど)に行ったことがない人なので、家でシュクメルリレシピを見て作ってみました。ガーリックの効いたクリームシチューという感じでした(合ってる?)もちろんおいしかったですよ。今やシチューの素みたいなシュクメルリの素まで発売されてますので、コース的にはカレーのポジションを目指すんでしょうかね。

 

で、最近第二弾でしょうか、松屋フーズより「チキンキエフ」が登場しております。

これね。

https://www.matsuyafoods.co.jp/matsunoya/whatsnew/images/211020_kiev_md.png

キエフとは、バターを鶏肉で巻いた伝統的なウクライナのかつ料理です」と説明されておりますが、めちゃくちゃおいしそうではありませんか!で、ウィキペディアで調べたところ、「伝統的なチキンキエフには手羽元の骨をつけたままにした胸肉を使う」とありました。手羽元からの胸肉って…ちょっとどうつながってるのかわかんないですね(笑)。日本では手に入れにくいのではと予想。

 

しかし「胸肉の代わりに鶏の挽肉を使うこともある」と書かれておりました。で、調べてみたところレシピが出てきましたね。

www.rbth.com

こちらの記事によりますと、チキンキエフの作者はフランスのシェフ、アメリカに移住したロシア人、ソ連のレストランなどいろいろあるものの、起源は謎だそうです。ロシアの文献に初めてチキンキエフが登場したのは1913年から1914年。「ハウスキーピング・ジャーナル」というのに挽肉の中にバターを入れ、卵とパン粉でコーティングしたものだと書かれていたそうです。このレシピは戦間期に忘れられ、第二次世界大戦後に鶏のフィレ肉(つまり胸肉か)を使って復活したのだそう。今ではロシアでも世界でもこの胸肉レシピが一般的な調理法だということです。なんと、鶏ひき肉が正統派だったんですね(松のやさん、聞いてる?)。

 

しかしミンチ肉レシピのほうも人気があり、こちらのほうが肉を薄くたたく必要がなく、やわらかいとのこと。また、パン粉には甘いブリオッシュを使うと絶妙なお味になるのだそうです。そしていただく際には、トーストした薄切りのパンの上に載せると、お肉の中のソースが切った際にしみこんでおいしいということでした。なんか、食べてみたいですよね。ただレシピを見ると、ヘルシーとされるチキン料理の割には、クリームやバターがたっぷり使われていて、しかも揚げ物なのでカロリーはかなりのものと思われます(汗)。

 

シュクメルリにしても、チキンキエフにしても、旧ソ連に属していた国の料理です。旧ソの料理ってどんなのかと思ったら、こういう記事もありましたよ。

www.saveur.com

バルト海から中央アジアまで、旧ソ連の料理を紹介する本「Please to the Table」を、アメリカに渡った移民の女性が書いていたそうです。1990年ごろ、ちょうどソ連が崩壊に向かってるころですね。

 

彼女は家族とともにアメリカに移民したんですが、その後も強くロシア文化につながっていたかったようです。モスクワに住んでいた子供時代には、海外旅行は無理なので、黒海沿岸のオデッサウズベキスタンジョージア(当時グルジア)に行ってみたいと思っていたそう。自分にとってのエキゾチックがそういった場所で、今思えばプロパガンダ信者だったそうですが、ソ連の多様性に魅了されていたそうです。

 

アメリカではピアニストを目指して学んだものの、手を痛めたため断念。イタリアに住んでいたこともあり、しばらくイタリア語の料理本を英訳していたそうなのですが、それなら自分で料理本を書いたほうがよいと思い、彼氏とともにソビエト料理の企画書を書いたところ、本となって賞を取り、Amazonの人気本にもなってしまったんだそうです。

 

彼女によれば、ソ連と言えば、パンを買うのに行列、魚はニシンで人々は飢えているというイメージがアメリカにはあったのだそう(私もそうでした)。実際には、各地で多様な料理があり、例えばアゼルバイジャンでは栗やカボチャを具材に使ったピラフがあり、ウズベキスタンコリアンダー饅頭はほとんど中華料理と同じだったと話しています。モスクワのロシア料理のイメージとは全く違うと。

 

ソ連が崩壊した後、食に関しては新しい国民意識が生まれているんだそうです。食べ物はより独自なものになり、旧ソ連の国々ではどこの国のピラフがおいしいかとか、どこの国が自分たちの料理を盗用したとかで盛り上がっているようですが、結局料理は同じであり続けることはないというのが彼女の意見です。また、ロシアとウクライナの間でボルシチの起源を巡っての国粋主義的争いがあると言いますが、料理は国境が出来る前から存在していたのであり、食における文化の盗用と言えるのだろうかと。争いは地政学的状況をよく表しており、誰が作ったというのは本当は別問題だと述べています。

 

まあ、そうですね。島国日本だって、じゃあラーメン、餃子、カレーとかいったい何料理なんだと言われると、ハイブリッド料理なのかもしれません。この本はレシピ以外にも旧ソの面白い食文化の情報もいっぱい入っているようで、読んでみたいですね。Amazonでみたら5000円以上の高い本だったので今は断念ですが、挽肉のチキンキエフは作ってみたいと思います。

 

ちなみにこの本の副題は、The Russian Cookbook(ロシアの料理本)でして、出版当時はソビエト料理本と呼ばないほうがいいと思ったため、代わりにロシアとしたのだそうです。その後ウクライナ人やアルメニア人から怒涛のご批判が来たとのこと(ありそう、笑)。今ならUSSRソ連の英語略称)と副題に入れてもレトロでクールと思われるのではないかということです。

 

もはや環境汚染の輸出?海を渡るリサイクル古着の実態

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bernswaelzによるPixabayからの画像

実は私結構シンプルライフに憧れています。

 

母親が典型的昭和の物欲旺盛なおばちゃんで、お菓子の包装紙やら古雑誌、無料のおまけの品までなんでも取っておく人でした。絶対に使うことのなさそうなものでも、なんかあったときに役立つと思っていたのか、はたまた捨てる=もったいないという思考が働いていたのか、とにかく子供時代の我が家には物があふれていたのでした。母は曲がりなりにも整理しようと思っており、物を片付けるためにさらに家具や箱を買い、何というか常に我々は物に挟まって生きているような感じだったのです(とほほ…)。

 

なので、反面教師といいますか、娘の私は物を溜めるのが大嫌いでして、定期的に処分してしまいます(ちなみに姉もそうです)。特に衣類。自分のはもちろん、子供たちはすぐ大きくなるので、結構溜まってたんですよね。きれいなものはお安くしてメルカリとかに出すとよく売れるんですが、ちょっと古くさくなったのや、汚れたものなどは、町内で月1回集めてもらえる古着のリサイクルに出していました。こういうのって、途上国に送られ、古着ビジネスでリサイクルされるんだと思っていました。

 

実は以前にファストファッションについての記事を書いたんですが、そのときに古着はリサイクルしないと環境汚染につながるって知ったんです。

この記事です。

newsphere.jp

話自体はファストファッションと呼ばれるいわゆる低価格ですぐダメになってしまう衣類の問題点を指摘するものでした。アメリカのジャーナリストの本の指摘をご紹介したものだったのですが、大量のファストファッション系の洋服がアメリカで捨てられていて、埋め立てられていると書いてあったんです。日本はごみを焼却することが多いのですが、土地の広いアメリカでは埋めたほうが安いみたいで、生分解されない衣類の化学繊維などが環境汚染を引き起こしているということでした。

 

やはり捨てるよりリサイクルだ!と鼻息荒く結論し、一生懸命売れない古着をリサイクルの日にまとめて出していたんですが、それがたどり着いた先で問題を起こしていると知ったのがつい最近です。

 

www.bbc.com

この映像ニュースを見て、愕然としました。私は海を渡った古着がアフリカなどで取引されていると思っていたんですが、実は大多数の古着はファストファッション系で、売り物にならないぐらい低品質なんだそうです。結局売れるものはほんの少しで、残りは現地で山積みのごみとなって埋め立てられ、その土地を汚染しているということです。つまり、先進国の衣類ゴミを途上国に輸出する形になっているんです。詳細はぜひ映像を見てください。

 

私、良かれと思って安物衣類をリサイクル出していたんですが、そんなことなら国内でゴミとして処理したほうがよっぽど途上国のためだったと気づきました。以来、よれよれのTシャツなどは切ってお掃除に使ったり、揚げ物をした後の油をしみこませてごみの日に出すようにしています。主婦の知恵(笑)。

 

リサイクルって良いことに感じますが、常にそうとも限らないんですね。前出のジャーナリストさんも言っていますが、衣料品素材のリサイクル技術が確立されるまでは、消費者が責任を持つべきでしょう。不要な衣類を買わない、捨てるぐらいまで着倒す、というのは大事です。実はこの夏コロナ禍で外出をしなくなって、Tシャツ数枚、短パン数枚で過ごせてしまいました。最初からそれでよかったんですよ。

 

シンプルな生活実現のため、目の前からいらないものを消すというやり方は意図せず他人の迷惑になっていたことに気づきました。申し訳ないんですが、断捨離もやり方によっては悪であり、近藤麻理恵さんにも猛省を促したいところです(ホント)。消費が増えないとデフレから脱却はできないという問題はさておき、今後はなにか買う前に、本当に必要か、今あるもので間に合わないかを考えたいですね。

アメリカやっぱり自己中。脱中国AUKUS同盟でも豪に不安が残る訳

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OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

涼しくなってきたと思いきや、今日はとっても暑い我が町です。エアコンまではいかないけど、そろそろしまおうと思った扇風機がフル稼働中です。

 

さて、ちょいと前にメディアを賑わせたオーストラリアの新アングロサクソン同盟(?)入りですが、秋とともに静かになってきました。仕事柄毎日グーグルニュースチェックをしていますが、最近は騒ぎも静まって、背景やこれからを深く分析した記事などが増えていると感じます。

 

面白かったものの一つですが、

www.politico.eu

 

タイトルは「どのようにして習近平はオーストラリアを失ったのか」です。

 

思えば豪はしばらく中国と蜜月時代がありました。そこから思いっきり方向転換したわけですが、そこまでに至る経緯を説明しています。

 

習近平主席が中国共産党のトップに立った2012年、豪は戦略地政学上の転換期の真っ最中だったということです。そもそも豪は植民地→英連邦にルーツを持ち、アジア太平洋地域のアメリカの番頭さん(笑)みたいな役割だったのですが、これからはアジアの時代ということで、独自にアジアにおける足場を築こうとしていました。その流れから地域の大国である中国に接近したわけです。

 

豪にしてみれば2国間の新時代が築かれるはずでしたが、そうはならなかった。中国もまた自分たちの軸足を固め、世界の経済や技術の力で超大国になろうと企てていたからです。表向きは誠実さと信頼を約束しつつ、西側同盟を切り崩すためまず豪を利用したということです。

 

その後は豪政府関連施設へのハッキング、豪中国語メディアへの攻撃、豪政治に対する中国ビジネスを通じての関与などを中国は次々と行いました。豪政府がコロナウイルスの起源の再調査を求めると、貿易規制を連発して反撃。また、南シナ海、香港、台湾といった豪の近隣地域で力による主張も高めていました。

 

こういった中国の戦狼外交が積もりに積もって、豪が逆噴射したというのが現在です。中国との貿易で距離を置こうとするなか、米英との軍事面での強化を豪は決断。さまざまないじめにあったことで、フランスとの潜水艦契約をぶっちぎってでも(これに関しては私の前の記事参照)、最悪の事態を想定して英米との協力に走ったとのことです。

 

豪戦略政策研究所(ASPI)のマイケル・シューブリッジ氏によれば、習近平氏は10年前には考えられなかった変化を起こしてしまったということです。まず2016年当時では原子力技術は無理としていた豪の政策を変えてしまったこと。そして互いの原子力技術の共有を認めていた英米が豪にもそれを共有することにシフトしたことだそうです。

 

潜水艦の件で欧州、とくにフランスはいい気持ちはしていませんが、豪貿易相ダン・テハン氏は、例え仲がこじれても「主権第一」という原則は曲げないとしています。シューブリッジ氏は、今は欧州は米豪に敵対的に感じるが、ほとぼりが冷めれば、アメリカのもとに帰ってくると見ています。対中感情は世界で悪化しており、豪に対するような中国のアクションは、西側の結束を結局強めるだろうとしています。

 

そういえば一帯一路の国々でも最近中国不人気ですし、欧州も中国警戒ムードが確かに広がってます。だからみんなで前みたいにアメリカのもとで団結して、中国に立ち向かうぞ!てな話になるかというと、実はそんな簡単なことではないようです。

 

theconversation.com

 

こちらはシドニー工科大学の教授ジェームス・ローレンスソン氏の寄稿です。中国に対抗するためにアメリカに経済的同盟を求めるのは間違いだという記事です。

 

中国による貿易攻撃に直面している豪は米に実質的な支援を求めていると同氏は言いますが、どうも米の支援は口先だけではないかということです。それどころか、米は豪の被害になるような選択に固執しているとのこと。

 

例えば、オバマ時代から米はWTO世界貿易機関)の審判機関に新たな裁判官を任命することを阻止しています。米中のような力を持たない豪にしてみればWTOのルールを各国が遵守することで自国の利益を守ることが必要ですが、その機会をアメリカの行動によって奪われています。

 

さらに、2020年に米が中国に圧力をかけて署名させた二国間貿易協定の実現をアメリカが主張しています。この協定により、米の生産者は中国市場へのアクセスが豪よりも有利になってしまう上に、大国が力で他国を強制することができることを、中国に示すことにもなってしまいます。

 

それでもモリソン豪首相は、「二国間の戦略的協力は経済問題にまで拡大されなければならない」としており、中国からの経済への攻撃に同盟で対応することを強く望んでいます。モリソン首相は米豪の定期的な経済対話を提案したといいますが、アメリカの反応は薄かったようです(涙)。

 

ローレンスソン氏は、経済同盟を懸念しています。その理由は、まず中国が豪に与えた痛手が限定的であることです。実は中国に圧力をかけられた輸出品において豪の輸出業者が負担したコストは輸出総額の10%未満だったとのこと。また、2021年上半期の豪の対中商品輸出は、2019年に作られた最高記録を37%上回っていました。これが意味するのは、中国の圧力の効き目はなく、豪経済は米の支援なしでも嵐を乗り切ることができるということです。

 

さらに、豪が希望するのは、中国がグローバルな貿易ルールに従うことですが、米との安全保障条約では国際貿易のルールを作ることはできません。そのうえ米は中国を戦略的ライバルに位置付けているため、豪が米との経済同盟を結ぶという考えが受け入れられるほど、豪が米とともに中国との「永遠の戦争」に巻き込まれる危険性が高まり、経済的利益がお流れになってしまう可能性もあります。

 

今後アメリカは豪を横目に中国との二国間協定を可能性さえあり、豪は経済面ではアメリカと結ばれないほうがよいという意見です。

 

結局アメリカが同盟国との多国間貿易協定に入らず、経済では独自に動くということであれば、豪のみでなく他国もやはり考えてしまいますよね。どの国も中国との貿易は大切ですから、少なくとも経済で脱中国を唱える国は出そうにない。むしろTPPのようなグループに入れて、少しずつでもルールのなかに組み入れようという考え方のほうが支持される可能性もありますね。