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アーティストから搾取のストリーミング。英報告書、制度のリセットを求める

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whoalice-mooreによるPixabayからの画像

最近仕事の合間にお散歩をするようにしてるのですが、その間に音楽を聴くようにしています。実は私、学生時代は洋楽にどっぷり浸かり、その勢いでレコード会社に勤めていたこともあります。すぐ辞めましたけど。趣味と仕事はなかなか両立しなかった(笑)。

 

家族でアップルミュージックをやってるので、4人で1500円ほど。たまに聞けない曲もありますが、最近は減ってきましたね。時代の流れで、前にストリーミングに楽曲を出さなかったアーティストも出すようになってるみたいです。昔お小遣いをせっせとためてLPやCDを買いに行っていた時代、そしてダウンロードに1曲いくらでお金払っていた時代に比べると素晴らしく便利で効率的、そしてお得感が高まりました。

 

しかし、ストリーミング時代に入ったことにより、アーティストのほうはえらいこっちゃになっているそうです。概要はこちら記事で。

 

newsphere.jp

 

イギリスでの話ですが、各国でも調べると同じ話題が出てますね。ストリーミングのお金の流れはかいつまんで言うと、アップルミュージックやスポティファイなどのプラットフォームが利用者から回収し、30%を自社の取り分とする→残りのうち15%は音楽出版社が、55%はレコード会社がゲット→レコード会社は取り分のうちの20~25%(13~16%程度という話も)をアーティストに支払う。ただし、事前に投資分としてアーティストに前払いしている額を差し引くので、借金があるうちはアーティストには一銭も入らない、というわけです。しかもアーティストが受け取るのは1ストリーミングあたり30銭から90銭ぐらい。明治時代なの?為替レートなの?と思うぐらいの単位の額で、これじゃ食えないよと怒りが爆発しているとのことでした。

 

イギリスでは音楽産業は大切な輸出産業でもあり、これはまずいんじゃないかということで、デジタル・文化・メディア・スポーツ省(盛りだくさんですね、DCMCと略します)の委員会が6か月を費やしてアーティストを含め関係者への聞き取りをして、現状を調べてきたわけです。その報告書が出たことを、BBCが報じております。

www.bbc.com

 

結論からいきますと、報告書は現在の制度は完全なリセットが必要とし、ロイヤルティ(印税など権利料)はレコード会社とアーティストが半分ずつにすることを求めています。ストリーミングが業界に多大な利益をもたらす一方、それを支える演奏家、作詞家、作曲家が損失を被っているとDCMC委員会の委員長は述べ、収益の公正な分配を受ける権利を法律で規定すべきとしております。

 

実は、制度改革にはこれまでがっつり現行のルールで稼いできた、ミック・ジャガーポール・マッカートニーなどの大御所アーティストたちも賛成しているんですね。音楽プロデューサーのナイル・ロジャースも、ストリーミングの懐具合は秘密に包まれているとし、その価値を理解できないと批判しました。

 

また、プラットフォーム側もすでに収益の7割をレーベルとアーティスト、出版社に渡しているため、制度変更の受け入れには前向きとしています。委員会からサービス自体への批判はほぼなかったとのことで、むしろ権利料を払わず音楽を使っているYouTubeTikTokFacebookなどのほうが問題視されています。

 

一方大手のソニー、ユニバーサル、ワーナーミュージックは、ロイヤルティ半々で折半というアイデアには抵抗しています。もともと半々という分け方は、イギリスではラジオやテレビで楽曲が再生された場合に適応されており、これが最も妥当な解決策と報告書は結論しているんですが、レコード会社のほうはストリーミングは「史上最高のレコード店」であり明らかなセールスであるとし、ラジオとは一緒にできないと主張しています。

 

レコード会社の業界団体、英国レコード産業協会(BPI)は、ストリーミングのおかげでアーティストが長期的に持続可能な収入を得られるようになったとし、新たな才能への投資が意図せぬ結果にならないよう、新しい政策は適切に検討すべきとしています。レコード会社によるアーティストへの投資は前年比で増加しており、アーティストのキャリアへの主要な投資家としてレコード会社が果たす役割は重要との主張です。

 

結局一番おいしいところを持って行っているレコード会社がそれを手放したくないということですよね。ストリーミング利用者としては、自分の好きなアーティストがもらうはずのお金が、レコード会社の偉いおじさんの懐に転がり込んでるかと思うと悲しいです。多分若い社員のところにはあまりお金は回っていないはず。経験上分かります(涙)。

 

もっとも今は、クラウドファンディングとかで製作費を賄うこともできるし、立派なスタジオがなくても自宅で音楽を作れる時代でもありますよね。レコード会社のほうが、なくなってもいい時代かもしれません。既存のシステムの上でふんぞり返り、アーティストとの共存を拒むなら、未来はない気もしますね。