UK9報道部

良質な「コタツ記事」を目指します。海外ニュースがメイン。

制裁で積む…。ロシア経済の行方にロシア人経済学者悲観的

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五輪終了と思ったら、ロシアがウクライナの侵略に走って世界はえらいことになっています。コロナのニュースも吹っ飛んでますね。

 

で、西側諸国はロシアへの経済制裁を決めたのですが、これについてのご意見を今日は一つご紹介。

元ツイートはロシア語です。スペインのIE大学の経済学教授、マキシム・ミロノフさんの超悲観的意見を、DeepLさんの英語訳を使って訳していきます。

 

たくさんの人が私に制裁についてのコメントを求めてきてますが、手短にいうと、見通しは最悪です。

 

最悪に輪をかけるのは、ロシアの人々、教育レベルの高い人たちでさえ、これから何が起きるのか理解していないことです。

 

すぐに、ロシア人は基本的な商品の不足に陥るでしょう。iPhoneやすでに輸入禁止になっているもののことではなく、食べ物、衣類、車、電気製品のことです。

 

ロシアは国際貿易にかなりがっちり組み込まれていますが、すでに大手の運送業者はロシアへのコンテナ輸送を拒否しています。奇跡が起きてコンテナを送ってくれる誰かが見つかっても、支払いはどうするんでしょう?また、ロシア製品を買い手は拒否するので輸出収入はだんだん減ります。

 

制裁を受けていない石油会社にさえ買い手はつきません。大手天然ガス輸出企業のガスプロムはすでに制裁下にあり、どうやって外貨収入を得るのかは分かりません。

 

ロシア中央銀行は6500億ドルという莫大な準備金を貯めていましたが、半分以上はすでに差し押さえられており、保有する金(Gold)もどうなるのか不透明です。どの国の銀行も、罰を恐れてロシアから買ってくれることはほぼないでしょう。

 

ロシアは、自動車、航空機、家電関係で、過去にたくさんの工場を建設してきたと思われていますが、これらはすべて輸入部品に頼っています。ということは、今後数か月は、産業全体が閉鎖されると考えられ、その結果品不足、失業、税収源となり、さらに公務員への給与支払いにも支障が出ます。

 

飛行機は国内線でさえももうすぐ運航停止になるでしょう。航空機はすべて輸入で、西側は部品の供給を禁止していますので、大規模な運航停止につながります。

 

インターネットも閉鎖されるでしょう。ニュースサイトの多くはすでにブロックされていますし、ウィキペディアも時期に閉鎖です。ツイッターFacebookYouTubeもです。

 

農業も影響を受けます。ロシアでは作物の種(タネ)の40%は輸入です。ジャガイモの種の90%は輸入されています。農業に力を入れることにはなるでしょうが、少なくとも短期的には基本的な農産物の不足は避けられず、価格は急上昇します。

 

さらに、ロシアから逃げ出せる人は脱出し始めるでしょう。すでに始まっていますが政府はこれを理解しているので、IT関連の人材を維持するため多くの対策を出してきました。それでも流出は止まらないので、もうすぐ一部で出国ビザ制度が導入される、または国自体を閉じてしまうことがありそうです。

 

唯一の希望の光は、ソ連時代に郷愁を持つ人々が、その魅力を存分に感じられるようになるということでしょうか。そしてそれは、比較的草食系のフルシチョフ-ブレジネフーゴルバチョフ型のソ連ではなく、狂った独裁者に率いられたソ連なのです。

 

この教授がツイートした後、様々な予測が現実になっています。露航空会社のアエロフロートとオーロラ航空が国際線を停止しました。外国企業からリースしている機体差し押さえを懸念しているからですね。子分のベラルーシだけには飛んでます。

 

メディアも一斉に萎縮させられています。この戦争でロシアに都合の悪い内容を書くと禁錮最大15年という法律が出たおかげで、自由主義メディアはすでに脱出し始め、残ったリベラルメディアも過去記事の削除を行って自衛しています。ソーシャルメディアTwitterFacebookはブロック対象となりました。

 

教授の追伸ツイートには、ロシア最大の自動車メーカー、アフトヴァースがすでに4日間操業停止したとあります。電子部品不足で自動車の組み立てを中断したとのことです。

 

制裁の影響はもちろん我々のほうにも出ますが、ロシア国民への影響はかなりのものとなりそうです。ものすごいプロパガンダを国民に流し続けているロシアなので、苦しみはすべて西側のせいということになりそうでそれも怖いですね。ロシアが勝っても負けても、国際社会の信頼は取り戻せないところまで来ており、行くも地獄戻るも地獄という状況、プーチンはどう見てるんでしょう。怖いです。

 

中国政府は容認?北京五輪中国代表アイリーン・グーに二重国籍疑惑

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北京の冬季五輪ももうすぐ終わりますね。

個人的には平野歩夢選手の金メダルが最高だったかな。

2回目のパフォーマンスで2位にされて、うそでしょっと思ったんですが、3回目お見事でした。あれが金じゃなかったら何が?って感じでしたね。

 

さて、最近フィギュア、スノーボードなんかを見ていても、アメリカでは冬季スポーツはアジア系の活躍が目立つんですが、そのなかでも女子フリースタイルスキーのアイリーン・グーが金2つ、銀1つのメダル大量生産で強さを見せました。彼女、実は北京五輪ではアメリカ代表ではなく中国代表です。

 

関連記事はこちら。

www.economist.com

www.theguardian.com

私、あんまり知らなかったんですが、モデルもやっているかなり有名な選手みたいです。綺麗ですもんね。18歳で米サンフランシスコ出身。中国人の母親とアメリカ人の父親の間に生まれ、餃子大好き中国語ペラペラとのこと。なんで餃子?餃子って西洋では中国人の典型的好物と認識されてるのかな(笑)。

 

2019年に中国籍を取得して中国代表として五輪に出ていますが、彼女がアメリカ国籍を捨てたかは分からないそうです。アメリカは二重国籍を認めていますが、中国は認めていませんので、ルールに則れば、彼女は米国籍から離脱しているはずです。

 

彼女のようなケースは中国でも結構問題になっているそう。過去に何百万人もの中国人が海外に渡る、または投資をして外国の国籍を得ています。法律では、その結果自動的に中国の市民権ははく奪されるはずです。ところが多くの人が外国籍を得たことを秘密にしており、中国籍を失うことを避けています。中国国民のみに交付される身分証明書をもっていれば、中国に住んで働くのがかなり容易になるとエコノミスト誌は説明しています。

 

かつては中国は海外に住む華僑を自国民とみなしていました。しかし、彼らの忠誠心が疑われるようになり、1950年代に政策変更。1980年には二重国籍禁止となりました。中国国内でも二重国籍禁止は人材の流出を促しているという批判が出て、外国籍=非愛国者というのはいかがなものかという意見があったそうです。これは日本でも言えますね。外国籍の日本人研究者のノーベル賞受賞の時いつも話題になります。

 

一方で、2009年には愛国映画に出演してた俳優の数人が、外国籍をもっていたことがわかり、怒りの声が上がるという事件もありました。ポップスターなども同様に厳しく糾弾されており、多くの国民は現行法を支持しているそうです。二重国籍が認められれば国内で不正に金を稼いで海外に逃げることが容易になるという主張もあるそうです。うは、いまや中国の方がどこよりも稼げるということでしょうか。

 

中国は2017年に外国パスポート保持者入国の際、指紋採取を開始しました。指紋は中国の身分証明書との照合ができるため、取り締まりが容易になるということで、二重国籍者は震えあがったらしいです。エコノミスト誌は、「五輪で金メダルが狙える人には柔軟に適用できるようです」と皮肉っぽく書いています。

 

グー選手は、自分の国籍の話では常にお茶を濁しています。まだアメリカ国籍なんでしょうかという質問に、「私はアメリカにいるときはアメリカ人、中国にいるときは中国人(エコノミスト誌)」と回答。まあ、子供のころから毎年中国に滞在しているということなので、その気持ちは分かりますが、答えになってないですね(汗)。

 

ガーディアン紙から、国籍のことで批判が出てますけど、という質問をされたときも「私は18歳で最高の人生を生きている」「私はいい人で、自分が下す決断の理由も分かっている。より多くの人々の利益になると思うからそうしている」と答えています。また、「無学で感謝や愛の経験のない人をなだめるために、時間を浪費する必要はない」「私を信じない、私が嫌いというのは損失だ。そう思う人が五輪で勝つことは絶対ないから」とかなり強気です。

 

ウイグル族の問題など、様々な人権侵害を行っている中国を代表するのは不謹慎という意見がアメリカではたくさん出ているそうです。以下は保守系メディアの意見。

www.nationalreview.com

グー選手は、フリースキーで好きなところは、どの国のために滑っているかではなく、仲間と共有する情熱であり、人々を団結させるこのスポーツの力だとしています。競技は国籍の問題ではなく、人と人をつなぐ、文化を共有する、互いに学び友情を育むと発言しています。

 

グー選手の国籍は関係ないという主張にニッキー・ヘイリー前国連大使は、「人権侵害」に加担していると批判。「市民権」という点ではどちらかを選ばなければならないと断言し、アメリカと中国は2つの全く異なる国だと述べました。「すべてのアスリートは国旗を背負うとき、自由を支持するのか、人権侵害を支持するのかを知っておかねばならない。その中間はない」としています。まあ、アメリカ人なら気持ちのよいお話ではないでしょうね。

 

私はグー選手がモデルという点も注目してしまいます。実は、彼女、五輪前から多文化アイデンティティを売りにモデルとして大成功しています。

www.lifestyleasia.com

 

この記事によれば、彼女は中国で人気急上昇。微博アカウントには約500万人のフォロワーがおり、中国の若者にとっては強力なインスピレーションになっているそう。アメリカと中国という2つのルーツを持つ彼女は、世界最大の2つの市場において、ブランドを代表するにはパーフェクトということです。

 

2021年にはグー選手は16のブランドとスポンサー契約を締結。今年は米中合わせて7つのブランドを追加。エスティ―ローダー、ルイ・ヴィトン、ヴィクトリアズ・シークレット、ティファニーなど有名ブランドのモデルとして活躍中です。中国ではチャイナモバイル、スポーツメーカーのANTA、中国銀行、JD.comなど主要企業の顔となっています。

 

市場調査会社の調べでは2021年に推定3140万ドル(約36億円)を稼いでいますが、なぜかフォーブスの番付対象には入ってなかったそう。もし入っていれば、大坂なおみセリーナ・ウィリアムズに続く3位だったということです。

 

二重国籍疑惑はぬぐえませんが、中国代表で五輪に出たことでさらに中国の仕事は増えるでしょう。もしかしてここが狙いだったのかも。西洋と東洋の魅力を兼ね備えるアジア系アメリカ人(今はアメリカ系アジア人か?)ということで、欧米でもアジアでも注目度は上がると思います。五輪はまさにプロモーションにとっては格好の場だったことは確かですね。プレゼン力高し。お見事です。

 

必要なのは信頼と連帯。デンマークがコロナ規制解除

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今日はデンマークです。

昨日この記事を書きました。通信社の報道をメインにまとめております。

newsphere.jp

デンマークはオミクロン株、しかもBA.2という亜種の感染が拡大中なんですが、コロナ規制を撤廃すると発表し、2月1日からほぼ全面解除になっているようです。この記事のなかで専門家のツイートをご紹介したんですが、字数の関係でちょこっとしか書けませんでしたのでここで詳しく見ていきたいと思います。

 

書いた方はデンマークオーフス大学政治学者、ミカエル・バング・ピーターセン氏です。パンデミック下の行動に関する政府のプロジェクト@HopeProject_dkのリーダーで、政府のアドバイザーでもあるとご本人が書かれてます。

 

ピーターセン氏によれば、デンマークではICU入院は減っていますが、感染者数は非常に多く入院も死者も緩やかに増えています。にもかかわらず、国民の60%以上が規制解除を望んでおり、懸念しているの28%を大きく上回っています。また、コロナが社会的脅威だという気持ちも低下しているそうです。

 

パンデミックを通してデータが示すのは、デンマーク人の主要な心配は自分の健康ではなく医療への負荷の高まりだということ。さらに、1月後半には健康よりロックダウンのほうが心配だという意見が勝っていたそうです。

 

こんな意見に影響しているのは、ワクチン接種率の高さです。国民のワクチンへの信頼は高く、全人口の81%が接種済み、また61%がブースターも接種済みです(接種は5歳以上から)。さらに、デンマークの感染はほぼオミクロン株によるもので、ブースター済みなら感染しても重症化の心配は低いとされています。実際に感染者は多くても医療体制への負荷は前の感染の波より低くなっています。

 

明らかな例はICU使用率の低下で、これはデルタからオミクロンにシフトしたことによります。現在の超過死亡はデルタによるものということ。

 

オミクロン感染がピークを迎えていないことを懸念する声もありますが、感染モデルからはもうじきピークを超える(もしかしたらもう超えているかも)ということです。

 

コロナによる後遺症も懸念されていますが、ワクチン接種は後遺症も防ぎ、デンマークでは子供の後遺症もまれで短いことが分かっているそうです。

 

状況が落ち着くまで規制解除を待つべきではという意見もあります。そうかもしれないが、待つことはタダではないというのがピーターセン氏の意見です。経済、心の健康、そして民主的権利におけるコストがかかるのです。これらのバランスを取るのがデンマークの戦略だとしています。

 

ピーターセン氏らの調査では、これらのコストはコロナ疲れを引き起こし、不信を煽ることが分かっています。デンマーク人の幸福感が比較的高いのは、これまで規制がいくらか穏やかで、可能であれば緩和するという方針が取られてきたためです。

 

パンデミックを管理するには妥協が伴い、「これだ」という戦略はありません。一連の理にかなった戦略の中で、民主的合意は妥協の中身より大事だとピーターセン氏は言います。

 

デンマークでは、高齢者の大多数さえ規制解除は大丈夫だと考えており、隔離で感染を避けられると感じているそうです。個人的に感染の脅威を感じているのは実は高齢者よりも中年で増えているそう。

 

規制解除は誰かに負担を課すことになりますが、それでも国民が受け入れるのはなぜなのか。ピーターセン氏は、若者は非常によく規制に従ってきたとし、政府への信頼と社会の連帯がデンマークでは非常に高いからではないかと説明しています。

 

さらにデンマーク人は危機にさらされている人を助けるという意識が高く、高齢者や弱者に対するソーシャルディスタンシングがよく守られ、注意を緩めず今後も対策を続けて行くものと思われるとしています。

 

それでは別の国でも責任を個人に向けるという方法を取るべきでしょうか?ピーターセン氏は、感染状況と市民がそれを選ぶかどうかによって決まるとしています。社会がコストを受け入れ、合意して行動するには信頼と連帯が必要だとしており、それは規制をするときも解除する時も同じだとしています。

 

ツイッターなんかでも今回のデンマークの決定はちょっと危ないんじゃないかと指摘される専門家もいましたが、国民もリスクを理解したうえでの政府の決断と言えそうですね。ちょっと前の言い方だと、民度の高さというんでしょうか。同じことができない国も確かにありますね。アメリカなどは、連帯の意識が低いのかワクチン接種にしても規制にしても社会としてコロナに対応していくという感じには見えないです。

 

日本はどうかというと、個人的には国民のレベルはデンマーク並みかそれ以上だと思います。ロックダウンを一度もしていないのに感染も死者もずっと低く抑えてきました。実は一時デルタ感染が広がったときには、もうロックダウンのほうが早い!と思った私ですが、やはり緩い規制だったことで、追い詰められた感が抑えられてよかったんだなとピーターセン氏の説明を読んで感じました。

 

マスク着用をはじめ集団としての感染対策もよくできていた(今もできてます)と思いますし、三密回避などにしても、早くから専門家の指導にしたがって生活してきました。お休みになっても心配だから実家の老いた両親のところに帰らないという配慮なんかも多くありましたよね。前政権の時には、猛スピードでワクチン接種も進め、他国の接種率にあっという間に追いつきましたし、国民としては世界トップレベルかもと思います(自画自賛かも)。

 

問題はデンマークと違って政府が信頼されていないことだと思います。まあ、菅さんのときもダメという批判はすごくて、もともと政府に注文が多い国民性かもしれませんね(笑)。ワクチン接種が成功してやめてから評価が高まった部分はありましたが…。

 

それにしても現政権のメッセージってずれてる気がします。すでに家庭や学校が感染の大きな経路になっているのに、飲食店対策、入国者の水際対策だけというのは謎。また、毎回医療崩壊寸前になってきたのに今回も同じ流れです。オミクロンは重症化しにくいという情報だけが先走りですが、感染者が増えれば医療体制は圧迫されると専門家の指摘があり他国でもそうなっていたのに、特に備えがなかったような…。

 

もっともがっかりなのは、ワクチン接種が遅れたことですね。11月に入ってオミクロンが登場。急速に広がっていくことが予測されたのに、ワクチン接種が進まずです。子供たちの接種もこれからあるのにこのスピードでは不安です。日本は国民の連帯はあるんで、あとは政府のリード次第なんですが、総じて自信のなさそうな後手後手対応なので国民の信頼というのが形成されないんだと思います。

 

実際のところ慎重な日本人が「規制全面解除!」の方向にいきなり動くとは思えませんが、感染対策に関してはいい意味で受け身が得意なので「こういう風にやります!ついてきてください」といえば前回ワクチンの時みたいにできる国民だと思うんですけどね。ということで、やっぱり信頼と連帯が揃わなければ、感染症対策ってうまくいかないんだなと思った次第です。

 

戻りますが、ピーターセン氏のツイートのなかで印象的だったのは、パンデミックではなくエンデミックという言葉を使っていたことです。季節的地域的流行という意味になりますが、すでにデンマークではコロナがそういった状況に移行していると考えており、今後またどっと感染の波が来ては去っていくインフルエンザのような状態になりつつあると考えているようです。これまでの感染症では歴史的にほぼその流れなので、そう信じたいところですね。デンマーク規制解除の成功を、祈りたいと思います。

 

 

 

キャンセルカルチャーの対象?社会派小説「アラバマ物語」、米で必読図書から除外に

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ここ数年、キャンセルカルチャーという言葉をよく耳にします。

ウィキペディアによりますと、「主に著名人を対象に過去の言動を告発し、それに批判が殺到することで、職や社会的地位を失わしめる社会現象や社会運動」と解説されております。だれかの過去を引っ張り出してきて糾弾することで、その人を社会から消す、というなかなか恐ろしいブームです(汗)。

 

発祥はアメリカなんじゃないかと思いますが、欧米で広まり日本でも東京五輪の関係者などの問題などで炎上しましたね。実は私はこれに関してはすごく懸念していまして、いろいろ以前から書いています。最初に書いたのはこの記事だったかなあ。

newsphere.jp

はてなブックマークで翻訳が下手とのご意見をいただきましたが、結構議論の種にしていただいたと思います(記事は翻訳を朝始めてその日のうちに納品してまして、当時は機械翻訳も使っていなかったため荒いことは確かです。悪しからず…)。若者は他人の非を見つけて拡散することで世界が変わると思っているようだけど、それって違うから、というオバマ元大統領の意見。まさに石を投げるだけでは建設的ではないということです。

 

続いて書いたのがこれかな?

newsphere.jp

BLMが盛り上がってキャンセルカルチャーが歴史上の人物にまで飛び火してしまったというニュースでした。実はこれは写真の女性の胸のポチに注目が集まって一部PVを稼いでしまったという不本意なネタではありました(笑)。しかし負の歴史というのは世界にたくさんあるんですが、破壊で葬り去ろうとする動きはちょっと日本では考えられないかと…。下手すると歴史の書き換えにもなりそうです。

 

お次はこれ。

newsphere.jp

こちらはアイビーリーグの名門大に入った元脱北者の女性が見たアメリカのリベラルの闇についてです。学生が自国の歴史を批判し、過度に政治的正しさを求めており、それに疑問を呈すことさえ許されない状況だと。これじゃ北朝鮮と同レベルじゃないかという率直な感想でした。こういった内容は、実はアメリカの保守系メディアがセンセーショナルに取り上げるんで、全部を思い切り信じることはできないと思いますが、逆の意見を言えない状況になっていることは大きな問題だと思います。

 

前振りが最高に長くなってしまいましたが、いよいよ本題。

www.seattletimes.com

ワシントン州マカルティオ教育委員会は、有色人種の生徒たちへの悪影響を懸念し、9年生(日本の中3?)の必読図書から1960年に出版された「アラバマ物語(原題:To Kill a Moking Bird)」外すことを決めたということです。

 

この作品は、レイプの濡れ衣を着せられた黒人男性を弁護する白人弁護士の活躍を描いたもので、ニューヨーク・タイムズ紙の読者が選ぶ過去125年間のベストブックに選ばれています。ネットで検索すると、必読図書にはワシントン州以外でもたくさん入っている感じですね。私も原文で読んだことがあるのですが、非常に悲しくも心に響く名作でした。映画にもなってますがそちらは見たことはないです。

 

もっとも昔の物語ですので差別的な内容や言葉がかなり含まれており、出版以来人気作品であり続けている反面、物議を醸すこともしばしばだったそうです。米図書館協会が毎年発表する「最も挑戦的な本」のリストにほぼ毎回ランクインしており、人種差別に関する理由で異議申し立てが頻繁にあったようです。

 

マカルティオ教育委員会が必読書から外した理由は、古典的な小説に見られる人種差別の懸念からだということ。もっとも禁書になった訳ではなく、教師が自発的に教えることは可能だそうです。

 

教育委員会のメンバーの一人は、本は非常に難しいテーマを含んでいるため、教師側も指導しにくいかもしれないとしています。また、人種差別を扱うだけでなく、差別が容認されていた時代を反映しており、ヒーローとして皆が記憶している弁護士も、自分の周りの人種差別に対してはある種寛容だったと述べています。本の中には、差別用語が有色人種に与える苦痛という視点もない、と厳しい意見です。

 

教育委員長は、自分の子供たちがこの作品を読んだときには、今議論されているような問題は全く出てこなかったとしつつも、今回の判断は最終的に委員会メンバーが生徒にとって最善と考えた結果だとしています。

 

この決定、やはり最近のBLMやポリティカルコレクトネスを意識したものなんでしょう。しかし個人的には過去に書かれた作品が今の価値観にふさわしくないからパスしようというのは賛成できません。黒人の子供たちにはつらく怒りを感じる内容なのかもしれませんが、この本に書かれていることが当時のリアルであり限界であったと知ることも大事ではないでしょうか。ここからさらなる公平を目指し進んでいく材料にしようと教師が指導することもできると思います。

 

ひどい、汚い言葉が多く子供たちの気持ちを傷つけるという意見もありますが、今の子供たちはネットやゲームでもっとひどい表現に出くわしている気も…。その辺は私はアメリカ人ではないので分かる人に聞いてみたいところです。

 

別の記事は、この本が白人の視点から書かれ(著者は白人です)、白人を救世主としたことが問題だという意見でした。白人の視点だから不適切=加害者が加害者の視点から差別を語るのはダメ、という考えが支持されるなら、同様に被害者が被害者の視点だけで物を見ていてもだめなんじゃないでしょうか。この記事では、解決策として黒人作家の作品も入れて人種問題を教えてはどうかと述べています。私もこれはより建設的だと思い賛成ですね。

 

最後になりましたが、この本は差別をする側に罪の意識を経た正義感をもたらすという点では必読だと思います。気分は白人ヒーローになったとしても、白人の学生は読むべきではないでしょうか。シアトル・タイムズに書かれていたニューヨーク・タイムズの読者の声をご紹介して終わりにしたいと思います。

 

私は小さく閉鎖的な西部の白人プロテスタントの町で育ちました。この本は私に人種差別の残酷さを初めて教えてくれたのです。この本が私の人生を変え、私を社会正義を大切にする人間にしてくれたのだと信じています。

 

環境に配慮は嘘?香港、コロナ隔離でゴミ増加

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今日はトンガ付近の海底火山の大噴火で、日本に津波警報などが出て結構な大事件になっています。噴火の衛星写真、超特大で怖いなぁ(汗)。「日本沈没」のドラマをこの前見たばかりなので、びびっております。日本では怖いのは地震津波だったんですが、噴火&津波の心配も加わりました。加えて目先の脅威はコロナですから、世紀末なんでしょうか、と暗くなったり…。

 

心配と言えば、ゴミ問題も結構なものですよね。これも世界の課題ですが、こんなニュースを見つけました。

www.scmp.com

 

香港では、コロナ隔離用ホテルの滞在者が使ったプラスチック容器類は、なんとすでに1億個を超えているということ。香港で3週間のコロナの隔離を経験した人が、大量に出るプラスチックごみを減らそうと期間中プラスチック容器などをほとんど持ち込まないことになんとか成功したそうです。

 

そもそもホテル到着時点で水のボトル、テレビのリモコンカバー、小分けのコーヒーの袋などが部屋に置いてあり、翌日からはプラスチックカップ、紙コップのふた、調味料の袋などが配布されたそうです。加えて知り合いが持ってきてくれた差し入れ品により、65個もプラスチック容器が増えてしまったとか。そこでプラスチック容器で提供される飲料や食品を避け、水のペットボトルも再利用するなどし、3週間のうち17日間はほぼプラ持ち込みなしで過ごしたそうです。えらい!

 

しかしこの頑張りにも関わらず、実はさらにプラスチックを使っていたことが判明しました。滞在していたホテルでは、毎回の食事を「生分解性」段ボール容器で提供していたのですが、これは純粋に紙だけで作られているわけではなく、油や液体が漏れないようプラスチックコーティングが施されていたとのこと。ゴミは埋め立てられますが、紙の部分は分解されてもプラスチック層は1000年も残り、その間にマイクロプラスチックとなって汚染を広げることになります。

 

米疾病管理予防センター(CDC)が物からの感染の可能性は低いと言っているにも関わらず、使い捨て容器が使われているのはどうなのか、ということで、再利用できるカトラリーを使ったり、歯ブラシやかみそりなどのアメニティもリクエスト制にするホテルも出てきたそうです。実は客のチェックアウト後に残されたホテルのアメニティは、未使用でも廃棄という決まりがあるそうで、ここが大きなロスになっているということです。

 

もっともホテル関係者は、この使い捨ての文化は宿泊客によって変えられなければならないとしています。結局生分解性の容器も、「環境に配慮している」という主張でしかなく、よりよい方法は使い捨て容器を出さない、つまり再利用可能なものを使うことだと述べています。また、ホテルを出るときに大きなリサイクル品でいっぱいの袋を抱え、近くのリサイクルボックスに投入する客もいるということですが、そもそも香港のプラスチック製品のリサイクル率は10.8%しかないということ。多くはリサイクルされず、善意の自己満足で終了する可能性が高そうです。

 

この記事の筆者は、やはり使い捨てより再利用のほうがまだ環境を守る可能性が高いとしており、我々が毎日頼りにしている製品の「グリーン」という主張は多くの場合嘘だとしています。マーケティング上手ともいいますよね。

 

私は隔離経験はないのですが、日本の場合はどうなんでしょうか?三食お弁当のようですから、やっぱりプラスチック容器は山ほど使われていると思いますね。ただ、日本は埋め立てより焼却が多いようですので、ちょっとはマシかも。だからといってゴミをたくさん出すのはやはり環境にはマイナスでしょう。コロナで世界的にマスクのゴミも増えているようですし、ホント、早く収束してほしいです。

 

 

砂漠にハリウッド?映画制作に乗り出すサウジアラビア

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あっという間に年末。私は28日に仕事納めをしまして、3日までお休みです。いろいろあった1年でした、と言いたいところですが、何があったのか悩むぐらい単調な1年であった気がします。子供たちが家を出たことと、コロナ禍であまりイベントがなかったことが大きく影響したかなと。

 

とは言え、楽しいこともしたいので、今年は映画館にできるだけ足を運ぶようにしました。大作はオンラインで見れることが多いので、ちょっと地味な映画を中心に結構見ましたね。クルド人の難民申請者の子供たちを描いた「東京クルド」、アフガニスタンから欧州に渡る難民一家が携帯で撮った作品「ミッドナイト・トラベラー」、自由だったころの香港が美しかった「ホアジャオの味」なんかよかったですね。

 

村上春樹の作品をもとにした、「ドライブ・マイ・カー」も見ましたが、正直演劇のシーンが長すぎて辛かったです。映画は原作からイメージして作られていたということで、そのあと原作を読むことになりました。実は私村上氏の初期の作品が大好きでした。いまでも「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はなんども読み返すぐらい好きです。

 

若いころはよかったんですが、おじ(い)さんの年になった村上氏のしつこいオナニーやセックスの描写に辟易して、しばらく村上作品から離れていたのです。村上氏ってハンサム系ではなく、どっちかというとバカボン系の顔(すみません…)で初老を過ぎて性的なものをおしゃれっぽく書かれるギャップに読者として適応できず。でも「騎士団長殺し」ぐらいからやや薄まった感があり(笑)、読んでもいいかなと思えていたんです。今回も映画の原作の収められた「女のいない男たち」も相変わらずセックスが多いんですが、以前の違和感がそんなになく読めました。文章は素晴らしいですよね。

 

あれ、本の話になっちゃったので戻ります。

さて、映画つながりで面白い記事を見つけました。これ。

www.economist.com

 

知らなかったんですが、サウジアラビアって2018年まで約35年間映画館が閉鎖されていたらしいです。70年代まではやっていたらしいんですが、「アラブ世界におけるイスラム教の影響力拡大に伴い強い権力を持つ聖職者らが映画館を閉鎖した」と、2018年のロイターの記事に説明されていました。2017年に皇太子が経済改革・社会改革の一環として解禁に踏み切ったとのことです。

 

今回のネタ元、エコノミスト誌の記事によれば、サウジは「砂漠のハリウッド」となるべく、外国映画の撮影誘致や、映画祭開催など意外な取り組みを始めているそうです。映画館も、すでに500以上のスクリーンが国内にできているとのこと。

 

映画産業への回帰は、3つの理由からきているとか。1つ目は石油に頼らない産業が必要だから。2つ目は、政治的抑圧に直面する若者を満足させたいから。3つ目は国際的にひどい自国の評判を高めるため、ということです。分かる気がする。

 

まずは映画産業は国内の観客を増やすことが第一の課題ということで、アラブ首長国連邦などからの投資も入り好調なようです。ロンドンの調査会社によれば、客単価の高い劇場が多く、2025年には世界第10位規模の興行収入になると予測されています。ほう。

 

次のステップは、海外の製作者を招くこと。ハリウッドとの共同制作が進行しており、一つは7世紀のアラビアものという鉄板テーマらしいです(笑)。サウジの魅力は、なんといっても砂漠。灰色から赤色まで様々な色の砂漠があり、アフガニスタンでも火星でも、あらゆる砂漠のイメージが実現できるそう!やはりセットよりリアルな砂漠が映画制作側には好まれるということです。さらに魅力的なのは資金面。サウジアラビアフィルム・コミッションが映画製作者に最大40%のリベートを提供するという好条件になっているそうです。さすが産油国

 

もっとも、ゼロから映画制作を始める苦労もあるそうです。まず近隣のヨルダン、エジプトなどとロケの誘致合戦や映画祭の日程重複などで揉めたりしているということ。また、大量のエキストラやフリーの長時間労働をするスタッフなどを探すのにも苦労しているようです。サウジ政府は、こういった問題解決のために、映画制作を教えるブートキャンプなどを計画したり、共同制作でハリウッドのやり方を学ばせるという方法を取っているそうです。かつての中国も共同制作でノウハウを学び、国内でメガ作品が作れるようになったとのこと。さらにサウジでは、国内のネオムという場所にデジタル産業に特化した都市を作り、メディアハブとする構想があるそうです。

 

映画制作への最も大きな障害は、やはり文化的、政治的に保守的な環境だとエコノミスト誌は述べています。同性愛が犯罪で女性はアバヤという黒の長衣で全身を隠すのが主流。イスラムの習慣やルールは、ハリウッドの人々にはハードルがまだまだ高いと見ています。サウジ当局は映画産業振興のために、ネオムのような「中国にとっての香港」のような特区を作って自らの主義主張を曲げる用意もあるようですが、どうでしょうかね。

 

サウジ側は行く行くは自国の言葉で自国の物語を映画にし、世界に売り込みたいたいようです。世界的ヒットになった「イカ・ゲーム」の成功で、視聴者の好みがより国際的になったと見ているようですが、エコノミスト誌はその目論見に関しては懐疑的です。

 

イスラム原理主義ですが、イランだと日本でもファンが多い芸術的映画作品はたくさんありますよね。そもそもイランは昔はもっと自由だったので、その時の影響もあるんでしょうかね。ただハリウッド的なスキャンダル満載テーマはなさそうです。

自由な芸術とサウジの超保守的イスラム社会がどのように調和するか注目ですね。村上作品はかなり無理かも(汗)。

 

それでは皆様よいお年をお迎えください。

 

 

 

 

新たな変異株を生む可能性も。メルク社の経口治療薬モルヌピラビルに懸念

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久々にブログ書いてます。

ここ1か月親戚が亡くなったり、息子がPCを盗まれたりと、なぜか大忙しの私でした。

PCは出てこないな~。シェアハウスの共用スペースに置いていて、ちょろっと席を外していた間に盗まれたということでしたが、息子よ、お前は本当に世間知らず。世の中には悪い人もいるんだよ、と叱っておきました。当然新しいのは自分で買え、と冷たく突き放しましたが、やはり世の中には拾う神あり。ガジェット好きのシェアハウスの社会人のお友達が、自分の持っている古いMacbookをくれたそうです(涙)。ちなみに当時書いていた大学のレポートはPCにしかセーブしてなかったので、最初っから書き直しになっちゃったとのこと。これに懲りて、今後はものを置きっぱなしで離れるな、です。

 

さて、最近オミクロンで世界は大騒ぎですね。ワクチンや薬が効かなくなるのではという心配も報じられています。コロナの飲み薬では、「モルヌピラビル」というのがもうすぐ日本でも特例承認されるということ。読売新聞によりますと、発症早期の継承から中等症の患者が服用すると、ウイルスの増殖が抑えられて重症化を防ぐとされているそうです。家で飲めるので、医療機関の負担も減ると期待されているようです。

 

ところが、こんなツイートを見つけました。

ワシントン大学の進化生物学者、カール・バーグストローム教授のものですが、この薬の安全性についていくらか心配しているということです。今回も機械翻訳さんと一緒に訳していきます。

 

教授によれば、モルヌピラビルは「致死突然変異誘発」を引き起こすことによって作用するとのこと。ウイルスに多くの突然変異を起こして弱らせ、免疫系がそのウイルスを取り除くことを可能にするのだそうです。

 

しかし、「亜致死的突然変異誘発」というリスクがあるとのこと。この場合ウイルスは広範囲に変異するものの除去されず、多数の突然変異を伴う新しい遺伝子型を作成します。ウイルスを排除することなく変異を加速するプロセスが問題となるかもしれないということです。

 

「亜致死的突然変異誘発」が起こる可能性は多くの証拠で示唆されており、特に重要なのは入院のリスクがある患者における可能性とのこと。モルヌピラビルを使用した患者の6%以上が入院を必要とするそうなのですが、慢性感染症の場合、この薬剤は原理的にウイルスの進化を促し、より広まりやすく、より重篤な病気を引き起こす、より危険な新株へと変化させる可能性があります。次のオミクロンなど誰も欲しくないのに。

 

さらにモルヌピラビルは40錠をわずか5日で服用することになっていますが、服用回数を守れなかったり、全量服用完了できなかった患者では、亜致死的な突然変異誘発の可能性が特に高いと考えられます。

 

モルヌピラビルは患者個人には利益をもたらしますが、何か問題が発生し新しい変異株への進化を助けることになった場合は、社会全体がその代償を払うことになります。すべては推測の域を出ないということは強調したいと教授は言っていますが、有効性や患者の安全性に加えて、「外部性」も考慮すべきだとしています。

 

うーん、なんか日本政府は買う気満々みたいなんですが、ちょっと心配ですね。ちなみにバーグストローム教授は、ファイザー製の経口薬のほうが患者にも他者にもよいと考えているようです。

 

コロナはまさに変異株との戦いとなってきましたので、人類自ら新たに強力な変異株の創造をしてしまうことは避けたいですね。あーあ、世の中本当に難しくなってます。