今日はデンマークです。
昨日この記事を書きました。通信社の報道をメインにまとめております。
デンマークはオミクロン株、しかもBA.2という亜種の感染が拡大中なんですが、コロナ規制を撤廃すると発表し、2月1日からほぼ全面解除になっているようです。この記事のなかで専門家のツイートをご紹介したんですが、字数の関係でちょこっとしか書けませんでしたのでここで詳しく見ていきたいと思います。
Today, Denmark lifted *all* restrictions, while cases are soaring.
— Michael Bang Petersen (@M_B_Petersen) 2022年2月1日
The international reaction: Disbelief.
I am leading the largest Danish project on pandemic behavior & I am advising the gov.
Here is why Danes are still supportive. And what may be learned from this.
🧵(1/19) pic.twitter.com/C6E9Fc9D1G
書いた方はデンマークのオーフス大学政治学者、ミカエル・バング・ピーターセン氏です。パンデミック下の行動に関する政府のプロジェクト@HopeProject_dkのリーダーで、政府のアドバイザーでもあるとご本人が書かれてます。
ピーターセン氏によれば、デンマークではICU入院は減っていますが、感染者数は非常に多く入院も死者も緩やかに増えています。にもかかわらず、国民の60%以上が規制解除を望んでおり、懸念しているの28%を大きく上回っています。また、コロナが社会的脅威だという気持ちも低下しているそうです。
パンデミックを通してデータが示すのは、デンマーク人の主要な心配は自分の健康ではなく医療への負荷の高まりだということ。さらに、1月後半には健康よりロックダウンのほうが心配だという意見が勝っていたそうです。
こんな意見に影響しているのは、ワクチン接種率の高さです。国民のワクチンへの信頼は高く、全人口の81%が接種済み、また61%がブースターも接種済みです(接種は5歳以上から)。さらに、デンマークの感染はほぼオミクロン株によるもので、ブースター済みなら感染しても重症化の心配は低いとされています。実際に感染者は多くても医療体制への負荷は前の感染の波より低くなっています。
明らかな例はICU使用率の低下で、これはデルタからオミクロンにシフトしたことによります。現在の超過死亡はデルタによるものということ。
オミクロン感染がピークを迎えていないことを懸念する声もありますが、感染モデルからはもうじきピークを超える(もしかしたらもう超えているかも)ということです。
コロナによる後遺症も懸念されていますが、ワクチン接種は後遺症も防ぎ、デンマークでは子供の後遺症もまれで短いことが分かっているそうです。
状況が落ち着くまで規制解除を待つべきではという意見もあります。そうかもしれないが、待つことはタダではないというのがピーターセン氏の意見です。経済、心の健康、そして民主的権利におけるコストがかかるのです。これらのバランスを取るのがデンマークの戦略だとしています。
ピーターセン氏らの調査では、これらのコストはコロナ疲れを引き起こし、不信を煽ることが分かっています。デンマーク人の幸福感が比較的高いのは、これまで規制がいくらか穏やかで、可能であれば緩和するという方針が取られてきたためです。
パンデミックを管理するには妥協が伴い、「これだ」という戦略はありません。一連の理にかなった戦略の中で、民主的合意は妥協の中身より大事だとピーターセン氏は言います。
デンマークでは、高齢者の大多数さえ規制解除は大丈夫だと考えており、隔離で感染を避けられると感じているそうです。個人的に感染の脅威を感じているのは実は高齢者よりも中年で増えているそう。
規制解除は誰かに負担を課すことになりますが、それでも国民が受け入れるのはなぜなのか。ピーターセン氏は、若者は非常によく規制に従ってきたとし、政府への信頼と社会の連帯がデンマークでは非常に高いからではないかと説明しています。
さらにデンマーク人は危機にさらされている人を助けるという意識が高く、高齢者や弱者に対するソーシャルディスタンシングがよく守られ、注意を緩めず今後も対策を続けて行くものと思われるとしています。
それでは別の国でも責任を個人に向けるという方法を取るべきでしょうか?ピーターセン氏は、感染状況と市民がそれを選ぶかどうかによって決まるとしています。社会がコストを受け入れ、合意して行動するには信頼と連帯が必要だとしており、それは規制をするときも解除する時も同じだとしています。
ツイッターなんかでも今回のデンマークの決定はちょっと危ないんじゃないかと指摘される専門家もいましたが、国民もリスクを理解したうえでの政府の決断と言えそうですね。ちょっと前の言い方だと、民度の高さというんでしょうか。同じことができない国も確かにありますね。アメリカなどは、連帯の意識が低いのかワクチン接種にしても規制にしても社会としてコロナに対応していくという感じには見えないです。
日本はどうかというと、個人的には国民のレベルはデンマーク並みかそれ以上だと思います。ロックダウンを一度もしていないのに感染も死者もずっと低く抑えてきました。実は一時デルタ感染が広がったときには、もうロックダウンのほうが早い!と思った私ですが、やはり緩い規制だったことで、追い詰められた感が抑えられてよかったんだなとピーターセン氏の説明を読んで感じました。
マスク着用をはじめ集団としての感染対策もよくできていた(今もできてます)と思いますし、三密回避などにしても、早くから専門家の指導にしたがって生活してきました。お休みになっても心配だから実家の老いた両親のところに帰らないという配慮なんかも多くありましたよね。前政権の時には、猛スピードでワクチン接種も進め、他国の接種率にあっという間に追いつきましたし、国民としては世界トップレベルかもと思います(自画自賛かも)。
問題はデンマークと違って政府が信頼されていないことだと思います。まあ、菅さんのときもダメという批判はすごくて、もともと政府に注文が多い国民性かもしれませんね(笑)。ワクチン接種が成功してやめてから評価が高まった部分はありましたが…。
それにしても現政権のメッセージってずれてる気がします。すでに家庭や学校が感染の大きな経路になっているのに、飲食店対策、入国者の水際対策だけというのは謎。また、毎回医療崩壊寸前になってきたのに今回も同じ流れです。オミクロンは重症化しにくいという情報だけが先走りですが、感染者が増えれば医療体制は圧迫されると専門家の指摘があり他国でもそうなっていたのに、特に備えがなかったような…。
もっともがっかりなのは、ワクチン接種が遅れたことですね。11月に入ってオミクロンが登場。急速に広がっていくことが予測されたのに、ワクチン接種が進まずです。子供たちの接種もこれからあるのにこのスピードでは不安です。日本は国民の連帯はあるんで、あとは政府のリード次第なんですが、総じて自信のなさそうな後手後手対応なので国民の信頼というのが形成されないんだと思います。
実際のところ慎重な日本人が「規制全面解除!」の方向にいきなり動くとは思えませんが、感染対策に関してはいい意味で受け身が得意なので「こういう風にやります!ついてきてください」といえば前回ワクチンの時みたいにできる国民だと思うんですけどね。ということで、やっぱり信頼と連帯が揃わなければ、感染症対策ってうまくいかないんだなと思った次第です。
戻りますが、ピーターセン氏のツイートのなかで印象的だったのは、パンデミックではなくエンデミックという言葉を使っていたことです。季節的地域的流行という意味になりますが、すでにデンマークではコロナがそういった状況に移行していると考えており、今後またどっと感染の波が来ては去っていくインフルエンザのような状態になりつつあると考えているようです。これまでの感染症では歴史的にほぼその流れなので、そう信じたいところですね。デンマーク規制解除の成功を、祈りたいと思います。