10月22日に「即位の礼」が執り行われました。
新しい時代の天皇は、ハンカチで汗を拭きながら「ハンカチ王子」とつぶやくなど、おやじギャグがお得意だそうです。また「夫婦喧嘩は犬が食べてくれます」とジョークも飛び出す気さくな人柄の持ち主です。その辺にいるおじさんっぽいですね。
ところが、英エコノミスト誌は、こんな記事を出しています。
「日本の天皇は、自身の宮殿で囚われの身だ」というタイトルです。
記事は天皇が皇太子時代に書かれた「テムズとともに」という本を引用しています。1980年代に、天皇がオックスフォード大学に留学された際の回顧録です。脂ぎったニシンや薄暗いパブとの遭遇、ジーンズをはいていたためにディスコに入店できなかったことなど、日本ではありえない経験が書かれており、テムズ川の交通に関する研究をしながら自由を楽しんだ2年間を、おそらく「人生で最も幸せな時期」だっただろうと記されていたそうです。
エコノミスト誌は、日本の皇室は驚くほど儀式的で謎めいているとし、天皇のイギリス生活についての明るい感想はほとんど日の目を浴びなかったと述べています。皇族の行動を細かくチェックしている宮内庁は、皇族のイメージを守るのに必死で、本が出版されて親近感とからかいを呼ぶことを恐れたとのことです。メディアもほぼ宮内庁の言いつけを守って皇族の個人的な報道は控えており、男女関係などに関する報道はないとしています(欧州ではパパラッチ大活躍なのでずいぶんな違いですね)。
皇族の男女関係にまつわるスキャンダルが少ないのは、あまりお金がないからだとエコノミスト誌は見ています。戦後天皇家の財産はほとんど没収され、住まいや土地も国有、生活費も国から支給されていると解説しています。上皇の天皇時代は、個人の買い物や活動に使えるお金は年500万円程度だったと推定されており、昭和天皇が無くなった時の資産は20億円以下だったということです(ちなみにイギリスのエリザベス女王の資産は、英タイムズ紙によれば540億円)。
これでは皇族は甘やかされた、しかし権利を制限された公務員だとエコノミスト誌は指摘しています。公務はされても、伝統を重んじる人々にとっては天皇のメインの仕事は神道の儀式を行うことであり、今のままでは女性の天皇が誕生することもない。憲法では天皇は「象徴」だが、皇族の繭に守られたままでは遺物になってしまうリスクもあるとし、その価値を高める余地はあまりないとしています。
個人的には、戦後の歴代天皇はよい仕事をされてきたと思うのですが、一人の人間としては、私たちが当たり前と考える自由や楽しみ、欲望を捨て、一生天皇という大役を演じて生きなければならない人でもあります。自由のない公務員と同じという指摘は確かに的を得ていると思います。
私自身は天皇に対して何の文句もないのですが、海外からはかわいそうな人だと見られているのは、なんとも悲しい限り。もう少し、おやじギャグでもなんでもいいので、物議を醸さない程度の自由な発言をしていただいても、よい気もします。時代も変わりましたし、これからも変わらざるを得ませんので。