UK9報道部

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現職大統領再選で対立候補国外へ。独裁国家ベラルーシどうなる?

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Zdeněk FekarによるPixabayからの画像

ここ数日、私のツイッターのタイムラインにベラルーシに関するコメントが増えてきました。ベラルーシ?旧ソビエト連邦の一部だったような…、ぐらいのお恥ずかしい認識しかないのですが、どうも選挙で混乱があったようで、現職6選という結果に不正があったのではというお話になっていました。せっかくなんで調べてみました。

 

まず、ベラルーシですが、やはり東欧の旧ソ連国家で、ロシア、ウクライナポーランドリトアニアラトビアに挟まれた内陸国です。ソ連崩壊で1991年に独立。1994年以来アレクサンドル・ルカチェンコが大統領を務めており、事実上の独裁国家となっています。BBCによれば、ルカチェンコによる独裁を西側諸国は批判しており、米ブッシュ政権は2005年に「欧州最後の独裁者」と呼んでいます。ルカチェンコは、野党の抗議運動に参加するものはすべて「テロリスト」として扱うと述べており、人権団体などにも非難されているそうです。

 

で、8月9日に大統領選があったのですが、今回は対立候補としてスベトラーナ・チハノフスカヤ氏が出馬しており、非常に人気が高かったのですが、なぜか80%以上の票を獲得し現職が圧勝しています。BBCは、不正選挙だった可能性を指摘しており、チハノフスカヤ氏も結果は受け入れられないと主張していました。首都ミンスクでは選挙結果に抗議するデモ参加者と警察の衝突が続いており、チハノフスカヤ氏はリトアニアに国外脱出したというところまでが、今日までに起きていることです。

 

チハノフスカヤ氏が大統領選に出馬した経緯を、アルジャジーラが詳しく説明しています。

www.aljazeera.com

チハノフスカヤ氏は37歳。元教師で主婦で2児の母という肩書きで、政治経験はゼロです。立候補したのは、立候補予定だった夫で人気YouTubeブロガーのセルゲイ氏が逮捕されたためで、夫の事件に注目が集まり、釈放の助けになることを願ったからだそうです。まさか立候補が当局から認められるとは思っていなかったそうですが、予想に反して許可され出馬の運びとなりました。

 

立候補登録して数日で、チハノフスカヤ氏の選挙運動には群衆が集まるようになりました。ミンスクではなんと6万3000人が選挙イベントに集結。古参の野党政治家でも苦戦する地方の選挙運動でも、数千人が集まるという異例の状況になり、26年間のルカチェンコ独裁がついに終わるのではないかと期待されるまでになっていました。

 

チハノフスカヤ氏が最強の野党候補になれたのはいくつかの理由があるとアルジャジーラは解説しています。まず、当局が彼女を政治的脅威と認識していなかったことが上げられており、弱小候補、とくに女性などいつでも潰せると考えたのが誤算だったということです。

 

チハノフスカヤ氏は、出馬資格をはく奪されたビクトル・ババリコ氏、バレリ・ツェプカロ氏という2人の野党議員の支持を得ており、ババリコ氏のキャンペーン・マネージャーとツェプカロ氏の妻がバックアップしたことも成功の理由とされています。3人の女性が団結して選挙を戦い、現職の男性上位主義に挑むというスタイルが共感を得たようです。また、チハノフスカヤ氏が元銀行員のババリコ氏、元外交官のツェプカロ氏、夫のセルゲイ氏を中心としたベラルーシ政治の新勢力の象徴であり、変化の手段と人々から見られたことも大きかったとされています。さらにもともと国内には反ルカチェンコ感情が広がっており、こちらもチハノフスカヤ氏に有利に働いたと見られます。

 

もう一つのBBCの記事によれば、チハノフスカヤ氏はベラルーシを脱出するという決断は自身が決めたことで、選挙前にリトアニアに避難させていた子供たちのためだとビデオで発表しています。しかし支援者たちは、政府の圧力で国外脱出をさせられたと見ているようです。

 

チハノフスカヤ氏は今でもヒーローであり、出馬は国内でも評価されていますが、やはり独裁者を追い出すというのは難しいようです。今後のデモや政府の動きが注目されますね。