UK9報道部

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日本人以外に人権はないの?難民問題への対応で考えていること

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 

 

半年ぐらい前でしょうか。たまたまSNSで流れてきた、「東京クルド」というドキュメンタリーを見ました。それからずいぶんたったんですが、入管法改正などで難民問題が困ったことになっていますので、私なりの意見を示しておきます。

youtu.be

 

ドキュメンタリーのほうは、上をクリックでご覧いただけますが、内容をざっと書いておきます。もちろんネタバレですので、見たい方はご注意を。

 

描かれているのは、トルコから来た18歳のクルド人青年です。クルド人は中東の国を持たない民族で、トルコでは政府と対立しており、彼は6歳で家族とともに日本に逃れてきました。難民認定の申請は認められず、行動範囲を制限され就労もできない「仮放免」という形で日本に住み続けています。

 

彼が隠れて働くのは建物の解体現場。日本人がやりたがらないきつい仕事を家族のために3年もしています。18歳なのに何もできない自分を、彼は「虫以下」、「価値がない」と評し、「人生楽しいと思えない」と言います。そんな彼にも、ついに夢見た仕事に就くチャンスが巡って来るのですが、合法的に働けないという理由で扉は閉ざされます。「もうやりたいことがない…」目じりを指でぐっと拭う彼の、わずかにあどけなさを残した横顔が、私はずっと、ずっと忘れられません。

 

日本に貧困や格差などの問題があることは事実ですが、夢を持ちそれを実現しようとする若者にはチャンスがあります。失敗したとしても、再チャレンジする道が残されています。日本国憲法は国民に基本的人権を保障しており、誰も彼らから自由を奪う権利はありません。目標に向かって前進する若者がいれば、多くの人が好感を持ち、そのエネルギーをポジティブに捉えることでしょう。経済的な支援をしてくれる人だって現れると思います。若者とは、未来に向かうべき存在だからです。

 

それだけに、夢に向かって進むことが許され、むしろそれを期待されている日本人の同世代と、やっと持てた夢を断ち切るしかないクルド人青年とのギャップは、あまりにも大きく感じられます。日本人ではないから、日本に住む法的許可がないからという理由で、自由に自分らしい生活をする権利を奪うことは残酷すぎます。たとえ不法滞在者であろうと、未来ある若者を宙ぶらりんの存在にしたまま、「生かしておく」ことは、静かな拷問にさえ感じるのです。

 

そもそも日本は難民認定を受けることが非常に難しい国で、この日本の制度が、不法滞在の子供たちを増やしている一因だと思います。難民認定を増やしていくことがもっとも適切な解決策だと思いますが、反対意見も国内には根強く、政治的にも大きく受け入れに舵を切れないのが実情でしょう。対外的には難民受け入れを促進したほうがイメージアップにはなるでしょうが、二国間関係等を考えればそう簡単でもないようです。たとえばクルド人と対立しているトルコは親日国ですので、外交上クルド人を受け入れることは避けられているように感じます。

 

さまざまな団体が難民支援に動いていますが、日本で難民問題を理解しようと思う人は多くはない印象です(私だってこの問題に関しては新参者ですので)。身近に難民申請をしている外国人がいれば別ですが、多くの日本人にとっては他人事であり、今後急速に難民受け入れの議論が進むことは、残念ながら期待できません。

 

しかしすでに日本に住み、働き、家族を作り、帰る場所も新たな行先もない人々が多数存在しているという事実を放置していいのでしょうか。特に子供たちついては、不法に日本に住むことが自主的な選択であったはずはなく、この子たちが一番の犠牲者です。彼らの中には、日本で生まれ育ち、母国語より日本語のほうが得意な子も多くなっています。日本の生活しか知らない、日本がふるさとになってしまった子供たちに、帰れ、日本人と同じ権利を求めるな、ということは私にはできません。

 

不法滞在者の問題解決が困難であることは分かります。政府は、「追い出せない人たち」に仮放免や入管施設収容で対応してきました。しかしそれ以外の対策が示せず、「仮」の状態で彼らを日本に住まわせ、不法労働を見逃し、帰国が前提の子供たちに日本語教育をするという矛盾した状態を作り出してきたのです。そこの責任を取らず、なぜか今後この矛盾を解決する策として、国外追放しやすくするという法改正に向かっているようです。

 

私はせめてこの「不都合な真実」ともいえる状態を解決するため、今現在日本で難民申請をして許可されず「仮放免」や「収容」となっている人々とその家族だけでも、「恩赦」のような形で救済すべきだと考えます。海外では多くの国で恩赦が行われており、日本だけできないはずはありません。少なくとも日本で働き暮らすことが認められれば、若い世代の不安を拭い、希望を与えることができると思います。

 

出入国在留管理庁によれば、2020年6月の在留外国人数は288万人を超えており、日本の人口の約2%となっています。少子高齢化もあり、日本政府も外国人材の受け入れに乗り出しましたが、言葉や文化の壁もあり、優秀な人材受け入れは簡単ではないようです。一方、現在不法滞在でも日本の学校に通う外国人の子どもたちの多くは、すでに日本と親の国の文化を理解しています。実は日本と海外の架け橋になれる非常に有望な人材とも言え、その意味でも、合法に家族と暮らし、安心して学習に励むことのできる機会を彼らに与えることは、日本の国益にもなると思います。

 

日本に生きる若者は、国籍、人種を問わず、これからの日本を作っていく力です。私は一人も不幸にしたくないし、不要な涙も流させたくありません。日本にいたいと願う若者を拒絶し、夢の実現を阻むような日本社会には、決してしたくはありません。彼らのためにささやかですが支援活動を経済的に支え、継続して声を上げていこうと思います。